無機的な高音の連続が、私を甘いまどろみの世界から厳しい現実の世界へと引き上げ

ようと、鼓膜を通して脳髄をつつく。私の身体は強い眠りへの欲求に従い、不快な音を

止めるべく無意識に腕を動かし、目覚まし時計を叩く。アラーム止めを正確に叩かれた

時計は、私を起こすことをあきらめさせられる。ざまーみろ。私は妨害を阻止できたこ

とに満足し、再び夢の世界へと……ってだめじゃない!今日は保美と出かける約束のは

ず。頭に急速によみがえった、約束の記憶により私の意識ははじかれたように目覚め、

パッと開いた目に現実の光景が入ってきた。

 ベッドの上で身体を起こし、夢の残滓を払うように頭を振る、今日はどうやらさわや

かな目覚めとはいかないらしい、基本的に朝には強いほうなのだけれど。ところで今は

何時なのだろう? どこか、朝早くではないような気がする。朝というのはもっと、こ

う、太陽の光の感じが違うような……。気になったので、枕もとの目覚まし時計に身体

をひねって手をのばし、つかんで持ち上げて顔の前に持ってくる。……どうやら、目覚

ましがなってから少々、だいたい二時間とちょっと、たっているようだ。まあこれくら

いは休日なら許容範囲のうちだろう、たぶん。

 しかし、寝坊とは私にしては珍しい。私は基本的には目覚ましがなるよりはやく目が

覚める性質だし……、!

 原因と思しき昨夜の自分の行動を思い出し、顔から火が出そうになる。と同時に、ア

ソコの様子が気になる。ずいぶん長時間弄くり廻してしまったが、腫れたりしてないだ

ろうか?

 ベッドから降りて、机の上の鏡を取り、またベッドに戻って 膝を立てて壁を背もた

れにしてシーツの上に座る。パジャマのズボンのふちに手をかけて腰から膝の辺りまで

持ち上げる、あれ、ショーツがない。ああ、あった、あった。ベッドの下の床の上に丸

まって。どうやら脱ぎ捨ててそのままだったようだ。とりあえずズボンだけでもはいた

のは私の良識の証だろうか?

 まあいいか、頭に浮かんだ疑問はとりあえず脇に置いといて、脚を開いて、左手に

持った鏡を立てた膝の手前に差し入れる。

 見たところ、私のアソコには異常はないようだ、腫れてもいないし赤くもなっていな

い。念のために、右手の人差し指と中指でアソコを割り開いて内側まで鏡に映す。……

健康上の問題はなさそうだ。

「……ちゃん、梢子ちゃん。なにをしてるのですか?」

突如耳に入ってきたナミの声に、反射的に肩がビクンと上下する。振り向いたところ

で、ナミと目が合った。微妙に気まずい。今の私の行為をなんと説明したものか? 夜

遅くまで自慰にふけってたんだけど、なかなかイけなくて、疲れてしまってそのまま寝

てしまったのだけれど、起きたら、アソコが腫れてたりしないか気になったので、鏡で

見てました。と素直に言うべきか誤魔化すべきか。

「起きるなりオナニー? 欲求不満なら言ってくれれば相手してあげるわよ」

 ナミのあとから入ってきた夏姉さんがこの状況を思いっきり誤解した提案を投げかけ

てくる。いや、たしかに欲求不満気味ではあるが、今はそんな暇はない。なんとか話題

を変えねば。

 とりあえず、パジャマのすそを戻しつつ、なにか話題はないかと視線をめぐらす。

 ん!? ナミの服装に目が止まる。フリルの多用された黒を貴重に袖口を始めとして

ところどころ白のレースがあしらわれたブラウス、すそに向かって広がりを持つこれま

たフリルが多く、レースで飾られたスカート。脚にはこれまた黒ベースのハイソック

ス、頭にはフリルのついた、えーと、これはヘッドレストだかボンネットだか。ところ

どころに十字架のモチーフ。全体をざっくり言ってしまえば、『ゴシック・アンド・ロ

リータファッション』。

「ナミ、その服はどうしたの?」

「和尚様が送ってくれました」

「和尚様っていうと」

 まさか、あの堂々たる体躯をした……

「咲森寺の佑快和尚よ。なんでも、新たなるジャンルへの挑戦だそうよ」

 夏姉さんの言葉により、私の思い浮かべた人物が正しかったことはわかったが、いか

んせんイメージがあわない。着物の仕立てが副業と言っていたから、洋服に手を出した

ということだろうか。

「まずは梢ちゃんたちに試着してもらって、実際に着てみた感想が聞きたいとおっ

しゃってらしたわ。というわけで、こっちが、梢ちゃんのよ」

 私にむかって夏姉さんが白い長方形のそこそこ大きな箱を差し出す。差し出された箱

を受け取り、ベッドの上に置き、ふたを取って中を覗き込む。中には、ナミが着ている

のと同じような服一式と、いくつかの恐らく皮製のアクセサリーが入っていた。

「どう? 梢ちゃん」

「どう? って、凝った服よね。でも結構いいかも」

新しい服に袖を通すことを思うと、やはりちょっとわくわくする。

「じゃあ、早速今日着たらどうかしら。おでかけなんでしょう?」

まあ、たしかに家の中で着るだけではつまらないだろうし、部活も忙しいから着る機会

も限られてはいる。佑快和尚もできるだけはやく感想は欲しいだろうし、今日着るとい

う提案は一理ある。

「そうね、今日着ていくことにするわ」

「そう、じゃあ今日の下着はこれね」

以前下着をまとめて処分されてしまった私は、毎朝夏姉さんの指定する下着を受け取る

のが習慣になっていた。異常なことなのだとも思うのだが、慣れというのはどんな状況

に対してもおこるらしい。わたしは差し出された一組のブラとショーツを当然のように

受け取った。今日の下着はワインレッドに黒のフリルがたっぷり、あらかじめ服装に合

わせて用意したらしい。

「それじゃ、着替えるから、出て行って」

 そう言って二人を部屋の外に出すと、早速着替えにかかった。

 まずはパジャマを脱いで、一気に全裸になる。そこからブラとショーツをつけて(今日

のショーツは横の紐で止めるタイプだが、心もとないということはないデザインだった)

ソックスを穿く、とここまではいつもどおり。ここから先は、和尚が衣装に添えてくれ

たメモを頼りに着替えていく、まずはドロワーズというかぼちゃパンツのような物を穿

く、この上につけるスカートを膨らますためのパニエの生地で皮膚を傷つけないように

するためらしい。パニエをつけたら、ペチコートを着てブラウス、スカートも身につけ

る。そこまでで一旦着るのをやめ、化粧をするために洗面所に向かう。こういう服装な

らメイクの感じも普段と変えた方がいいのかかしら? とわいえ私はあまり化粧品の種

類を豊富に持っているわけではないので、口紅だけ持っている中では比較的派手な色の

ものにして、あとは結局普段どおりに軽めのメイクで済ませた。


 部屋に戻ってきて、今度はチョーカーをはめ(ちょっと首輪っぽい)、ボレロを羽織

り、ブレスレット(太いベルトに四角い金具がぶら下がったようなデザインだ)着け

て、最後にリボンのついた小さなシルクハットを頭にピンで止めて、十字架の形のイヤ

リングをつける。


 鏡に全身を映してみる。うわ、なんか別人になった気分。普段はこんな赤と黒のはっ

きりしたコントラストの服装なんてしないし。白のフリルが光ってるみたいで綺麗。な

んだか気分が高揚してきた。


 と、そこで机の上の時計を確認する。いけない!もう出かけないと。朝食は(むしろ

ブランチかも)諦めて、手早く財布、携帯等々を服に合わせたと思しきバッグに入れ、

部屋をでて早足で廊下を歩き、階段を駆け下りて、玄関に到達する。そこで、ナミに声

をかけられる。


「梢子ちゃん、靴はこれです」

差し出されたのは、リボンのついた黒いエナメルの靴。たしかに、いつのも靴では違和

感がでるだろう。

「ありがと、ナミ」

手早く靴に足を通して、

「それじゃ、いってきます」

「いってらっしゃいです」

「いってらっしゃい。梢ちゃん」

ばたばたと、玄関を出た。


 いつも通学に使っている駅から電車にのり、保美と約束した待ち合わせ場所のある駅

に向かう。着いたところで、保美にメール。いつもと違う服装であることを伝える。

 すぐに返信。

『わたしももうすぐ着きます。早くかわいい梢子先輩を見たいです(ハート)』

 しばらく待ち合わせ場所に立っていると、むこうから私の今の恰好に似ているけど色

合いが違う服を着た女の子を見つけた。興味をもってよく見ると、保美じゃない! 

こっちに手を振ってるし。こちらも振りかえすと、テテテっと小走りで近づいて来た。

「おはよう、保美。保美もなの?」

「おはようございます梢子先輩。はい。わたしにも和尚さまが送ってくださいました。

お揃いですね私たち」

 やっぱり、ちょっと口惜しいけど、こういう恰好は保美のが似合っていると思う。端

的に言うと、すごくかわいい。

「よく似合ってるわよ、保美。うらやましいわ」

 喜んでくれたのか、保美の顔に笑みが広がる。

「先輩も、とってもかわいいですよ。お人形さんみたい」

 なんのてらいもなく、そういわれると照れる。ちょっとほおに熱を感じる。

「それじゃ、保美行きましょうか? 買い物、どこに行くの?」

 照れをごまかすように、出発をうながす。

 保美から返ってきた答えは、有名な電気街だった。なにを買うのかしら?


 環状線の円周をまたぐような路線をもつ、まさに首都の真ん中を横切る列車に揺られ

ることしばらく。日本でおそらく最大の電気店街が近づいてきた。電車の経路から分か

るように、とにかくたくさんの人が乗っている。その中で私たちの恰好は当然奇異な分

注目をあつめる訳で……

「保美、私たち目立ってない?」

 隣の保美に小声で話しかける

「気になりますか?」

「気になるっていうか、恥ずかしいって言うか、なんかお尻のあたりがムズムズするよ

うな……」

 何だろう、こう痛くない針でつつかれてるような、そんな気分だ。多分あっちこっち

から見られてはすぐ視線を外されるのを繰り返してるせいだと思うのだけれど。

 うーん。うまく言えない感覚だ。

「きっと物足りないんですよ。先輩は」

「!!!」

 さらりととんでもないことを言う保美に対して返すことばが出てこずに、絶句する。

「もっ……物足りないって何よ!?」

 思わず声が大きくなる。何だかこの一声でさらに注目されてしまったようだが、後悔

しても遅い。何だかすごい恥ずかしいことを言った気がする。何話してると思われたん

だろう。あっなんかムズムズが強くなった。

「大丈夫ですよ、梢子先輩。必ず満足させてあげますから」

「だから、何のことよ!?」

「ほら、先輩。駅に着きましたよ。降りましょう」

 結局はぐらかされてしまう。

 駅に降り立って、改札口に向かう途中で、地面に大きくかかれた、アニメ調の美少女

のイラストに遭遇する。どうやら噂どおりのところらしい。今日のナミとか連れてきた

ら、すごいことになるんじゃないだろうか? あの恰好だし。かわいかったなー、ナ

ミ。

「先輩、何考えてるんですか? 切符出さないとぶつかりますよ」

 保美がちょっと機嫌悪そうな声を出す。

 おっといけない。ICカードを出そうとするが、いつもとバッグが違うせいで少し手間

取る。あった、あった。目の前に迫った改札機のゲートを開くために。急いでタッチし

た。


「こんにちわ。注文した品物が届いたと連絡いただいて、受け取りに来ました。これ注

文書の控えです」

 電気街特有の、狭いアーケードの中の一つの店先で、保美がカウンター越しにおじさ

んに声をかけている。保美から紙片を受け取ったおじさんは カウンターの下をごそご

そと探して、紙袋に入った何かを取り出して、それを保美が受け取った。何かの機材だ

ろうか?

 保美が簡単に品物をチェックして、それから挨拶をしてお店の前を去る。

「何を買ったの? 保美」

 ちょっとたずねてみる。

「委員会でつかう装置です」

 委員会? 保美は何かの委員だったろうか? そんな記憶はないのだけれど……

「ねえ、先輩。ちょっと表の通りとか、見て行きませんか? あまり来る機会ありませ

んし」

 わたしの思考は、結局保美の声で遮られ、そのままどこかへ行ってしまった。

「そうね、せっかくおしゃれしたんだし、ちょっと歩いていきましょうか」

 保美と二人で出かけるのも、久しぶりだし、時間もあるしかまわないだろう。

 後から思えば、それがある意味間違いだった。


 表の通りに出ると、いわゆる歩行者天国で、車道にまでいっぱい人が歩いている状態

だった。これだけ人がいれば、私たちでも人ごみに紛れれるかも。と一瞬思った矢先、

背筋に電流が走るような感覚におそわれた。

 なに……この強烈な視線!?

 一斉にまわりの目線がこちらに向く。電車や駅で感じたものなど比較にならないくら

い遠慮もない、数もすごい、強烈な視線。

 首を巡らせて避けようとしても、どこを向いても、こちらに対する視線にあふれてい

る。

 そんなに、めずらしいかしら? 何だか……からだが……あつい。

 裸の全身に無数の蛇が絡みついて、その鱗で擦られてるような、そんな感覚。

 思わず、逃げ出そうとしたのに、保美に巧みに抱きつかれて、動きがとれなくなって

しまう。力なら、私の方がずっと強いのに……

「ダメじゃないですか、梢子先輩、逃げたら、せっかく、先輩の好きそうなシチュエー

ションを作ったんですから」

 つくった……? まさか、衣装から、行き先まで、計算づく? 買い物なんて口実

だった?

 だめだ、頭がだんだんのぼせたように、思考に薄いもやがかかる、考えることを、絡

みつく、粘っこい視線が邪魔をする。

 保美が、抱きついて動きを封じたまま、艶かしく耳元で囁いてくる。

「たまらないでしょう?」

 その仕草が、まわりの歩行者……、いや観客を興奮させたのか、さらに近づき、興奮

した眼差しを送ってくる。

 ライオンに囲まれた、シマウマになったような、食べられそうな追い詰められた気分

が心の中いっぱいに広がる。

 と、同時に私は確かに興奮していた。もうムズムズした、よく分からない感じじゃな

い。この感覚は間違いなく情欲による興奮だ。ぬるりと、足の間に湿り気を感じる。そ

とからは分からないと分かっていても、バレたらどうしようと、頭に声が響く、さらに

気分の悲壮感が増す。

「大丈夫ですよ、先輩、触られたりしませんから」

 小さな、しかし、自信のこもった声で耳元でささやかれる。

「だい、じょうぶ……なの?」

 もはや、喘ぎごえも同然の、かすれた声でたずねる。

「言ったじゃないですか。シチュエーションを作ったって」

 いったいどこまで、ほんとなんだろう?

 でも、確かに包囲の輪はもう手を伸ばせば届きそうなほど、狭まってるのに、見るだ

けで誰も、それ以上のことはする気配がない。

「先輩のために、さらにサービスしますね。……撮ってもいいですよ!」

 保美の声が合図になったように。そこかしこから、カメラが取り出されて構えられ

る。100台? いやもっとある。 あれが一斉に!?

 一瞬のちに、しかし感覚では、かなり焦らされたあと。スコールのように、フラッ

シュ光が全身に降り注ぐ。シャッター音が重なって、機関銃のような音を立てる。そう

やって、”撮られてる”と私の目と耳に伝えているのだ、間違いなく。

 目に映る光景が白んでいるのは、シャッターのせいか? あるいは興奮のせいなのだ

ろうか。

 あまりの、撮影に、服どころか、皮膚すら透かして映されてるような。体中に視線が

入り込んで、暴れているみたいだ。もう、気持ちよすぎて、どれでどの感覚を刺激され

てるのか、区別があいまいになってくる。

 しかし、どこまで上り詰めても、頂上にとどかない。もどかしいくらい、とどかな

い。

「梢子先輩。苦しいですか? 大丈夫です、なんでそうなのかはわたしはちゃんとわ

かってますから。もしイきたいなら、きちんと言ってくださいね。ちゃんとイかせて差

し上げますから」

 そのことばに、弾かれたように首をふる。

「だめですよ先輩。ちゃん言葉で言ってください」

 保美の 意地悪……

 保美の耳に齧りつくように口をよせて、乱れた脳で精一杯の言葉を紡ぐ。

「イか……せて、ちょうだい。お……ね……」

「はい、よく言えました。じゃあ、場所を替えましょうか。……みなさん、お疲れさま

でした。もう結構です」

 観客はやはり、その声にしたがい、一斉に撮影をやめ、包囲をといて、なにごともな

かったかのように、各々の方向に歩き出した。まるで、夢を見ているみたいだ。 

「じゃあ先輩ついてきてくださいね。 それとも肩をお貸ししましょうか?」

「おね、がい」

「じゃあ行きますね。大丈夫もう少しですよ」

 藁にすがる、遭難者のように、私はただ保美にすがりついて、ついていくしかなかっ

た。


 保美が私を連れてきたのは、何の変哲もない、裏通りの雑居ビルのような建物だっ

た。外階段をあがり、扉を開けて、中に入ると、受付があった。

「予約した、相沢です」

 保美が告げて何かをみせると、鍵を渡された。

 そのまま保美は私の手を引いて、渡された鍵の番号の部屋まで行き、中に入った。

 なかは、以外に整えられており、ベッドルームになっていた。なぜか、ベッドの正面

にスクリーンがある。

「なんなの、ここ?」

「レンタルルームですよ。大丈夫です。ちゃんと防音もしてありますから。」

 たしかに、いまは細かいことはどうでもいい。この、躰に灯った官能の火を消すこと

ができるならば。

「さあ先輩、ベッドにどうぞ」

 私は、ベッドに向かうと、すぐに服に手をかけて、脱ごうとした。

「待ってください先輩、脱ぐなら下だけどうぞ」

 なんでかわからないが、それもそうだ、手っ取り早くいこう。

 手早くスカートを脱ぎ、ショーツの紐を解いて投げ捨てる。

「保美、お願い」

「何言ってるんですか。ご自分でどうぞ」

 突然の保美の冷たい態度に、ぞわりと被虐感がはしる。

「さらに、先輩にサービスです」

 そういうと、いつの間に置いたのだろう、ベッドとスクリーンの間の台に置かれた機

械のスイッチが入れられる。

 機械の正面、こちらがわにはレンズが向けられている、そして、スクリーンには、た

くさんの升目が区切られ、その一つ一つに見知った顔が浮かんだ。声らしきものも聞こ

える。これはもしかして……

「そうです。この部屋と、私たち”委員会”のメンバーのとが、いま双方向に映像、音声

を送りあってます」

「じゃあ」

「梢子先輩。先輩がさっきなんでイけなかったのか教えてあげます。だって先輩はレズ

ビアンじゃないですか」

 ! そういえばそうだった。

「さあ、先輩。たくさんの女の子に見られながら、イきたいだけイってください」

「そうよ、小山内さん。思う存分イきなさい」

「オサ先輩、いい格好ですねー。写真もとりますね」

「梢子さん、こんどその恰好でデートしてください。ナミちゃんもいっしょに」

「おねーさんの、そのとろけた表情がたまりませんね。全面的に援助した甲斐があった

というものです」

 機械を通して、私に様々な声がふりそそぐ、そうよ、これが足りなかったのよ。ひと

りで自分を慰めたってダメな訳だ。

 私は、ベッドの上に座り、足を開いて膝を立て、片手をついて腰を浮かせて、グッと

突き出す。見てもらうために。

「みんな、しっかり見ててね」

 画面の向こうに呼びかける。

「大丈夫ですよ。梢子先輩のあられもない姿をみんな蔑んで見てくれますから」

 保美のその一言に、熱いしずくが、股の間から吹き出てたれる。

「梢ちゃんたらおもらし? なつかしいわね」

「赤ちゃんみたいです」

 画面の向こうから、次々に恥ずかしさを刺激する声が飛んでくる。その声に押される

ように、中指を、秘唇のあいだの膣口に突き入れる、途端に肉壁が貪欲に絡まってく

る。

 走った快感のせいで、バランスをくずし、腰がベッドの上に落ちる。構わないで空い

た左手も、股間に持ってきて、固く尖ったひめさきを指で揉むように刺激する。

「ほう、どうやら片手では足りないらしいな。貪欲な奴め」

「オサー、こんどそばまで行ったら私の手も貸してあげようか?」

 もう、何を言われているか、判別できない。ただ、声が聞こえることが、確実に見ら

れていることを意識させ、私を快感の極みへと導く。

 ひたすら、指でほじくりかえす。揉んでつまんで、引っ張る。躰を不規則にゆらす。

 快楽をもとめる本能が、指を別の生き物のように操って突き動かす。

 視覚が、よく見知った顔に浮かぶ軽蔑したような表情を的確にとらえ、私のプライド

をズタズタに引き裂いてくれる。

「あっ、見て、笑って、気持ちいい、あん、はぅ、や、あぁ、もっと、もっと、そう

よ、そこよ、来る、来ちゃう、もう……」

 自分の喘ぎ声、吐息すらも、官能を高めるBGMにする。もうすこし、あとちょっ

と……、あ、イクーーーーウウウゥ!


「ハァ、はあ、はあ」

 しばらく余韻に浸ったのち、上がった息をすこしずつ整えていく。

「どうですか、梢子先輩、満足してもらえましたか?」

 保美がいつものようにやさしい声にもどってたずねてくる。

「ええ、満足よ。とってもすっきりした気分よ」

「梢子先輩が、どうも最近欲求不満らしいとお姉ちゃんに聞いて、用意した意味があっ

たみたいでよかったです」

 どうやら、私に秘密をもつ権利はないらしい。

「すごいでしょう、この機械。これさえあれば、先輩はもう溜め込まなくていいんです

よ」

「ありがと、でも、疲れた、ちょっと眠る」

「はい、おやすみなさい、梢子先輩」

 保美の声に送られて、気持ちよい清涼感につつまれて、私は眠りに落ちた。


「オサせんぱーい。こっちこっちー」

 百子の相変わらず元気な声が私をよんでいる。

「はーい今行くわー」

 身体にまとったバスタオルが落ちないように支えながら、小走りで海岸を百子たちが

いる方へとすすむ。

「梢子先輩、すごいですよ。わたしたち、ついに海岸を借りきっちゃいました」

 あまり興奮することのない保美もさすがに興奮気味だ。そりゃそうだ、プライベート

ビーチなんて、普通は使う機会なんてあるものではないのだから。


 私が全員の中央に立ったところで、百子がマイクをもった。

「それでは、『小山内梢子の羞恥心を大いに刺激する委員会』略してOSO委員会のプレ

ミアム会員げんてい、オフラインミーティングを開催いたしまーす! さあオサ先輩今

日はどんな恥ずかしい水着で来たんですか? 紐ビキニですか? Tバックですか? 大

胆にトップレスですか? 注目の衣装公開です!」

 その掛け声に合わせて、バスタオルを一気に外して、全身を衆目にさらす。

「おやー、これはまた懐かしい、私たち初期メンバーが最初に送った水着ではありませ

んかー。ちょっとざんねんですねー。刺激がありませんねー」

 百子が落胆してみせる。まあ、これも打ち合わせどおりだ。しかし何人かは気づいた

のだろう、そこかしこでざわめきが上がる。

「よく見なさい、百子。これは描いてあるのよ」

「ということは、なんと裸! ボディーペインティング! さすが変態! 露出狂! 

さあみなさん、たっぷり視線で、声で、小山内梢子をなぶって楽しみましょう」

 そう、私たちはあの後、さる大組織の全面バックアップのもと、女性限定の、私の生

中継露出サイトを始めた。貴女も、ぜひOSO委員会で検索してメンバーになってね。


END


あとがき

 読者のみなさま、長らくお待たせしました。オサM最終話です。いろいろとツッコミ

どころ満載ですが、ものによっては、設定とか語りだすと長くなるから、面倒くさがっ

て省略したせいです。すみません。

 しかし、結構当初と方向性かわったなあ・・・ では、ほんとにお付き合い有難うご

ざいました。