部屋の中に暖かい日差しが差し込んでいる。その光に誘われるように、窓の外を眺めれ

ば芝生の上で小鳥の遊ぶ、平和な光景が垣間見える。まるで今日と言う日を祝福してくれ

ているみたい。

 こんこん、とドアをノックする音があり、そちらを向くと、ゆっくりと扉が開いてくる。

 そこから現れたのは、私の愛しい人、いよいよ人生の伴侶として旅立つ相手。……だれ

だか良く分からないのだけれど。

 その誰だかの口が開き私に言葉が投げけられる。

「綺麗だよ、梢子。本当に」

「やだ、……」

 えーと、この人はだれだっけ?

「もう、あなたったら。でも嬉しいわ」

 こういえばとりあえず角はたつまい。

「もう『あなた』かい? でも、本当に似合ってるよ、その、ビキニ」

 !!

 恐る恐る自分の服装を見ると、それは、純白の、際どい水着であった。ちょ、ちょっと

まったー!

「さあ梢子、もう皆待っている。行こう」

 半ば強引に手を引かれて、私は歩き出す、こんな格好で一生に一度のハレの舞台なわけ

!?

 混乱する思考のまま、両開きの大きな扉が開かれ、その向こうから目もくらむような閃

光の群れが……




「!?!?!?」

 勢い良く目を開いたところに、飛び込んできたのはゆるく波打つ真っ白な髪。続いて認

識するのは唇の湿った感触。あっ、なくなった。

「梢子ちゃん、おはようございます」

 私に覆いかぶさって見下ろしているナミの口から鈴を転がすような心地よい声が発せら

れる。

 この状況もある意味十分異常なのだろうが、さっきまでに比べれば幾分マシだろう。何

よりいつものことだ。

「おはよう、ナミ」

 ナミの顔を見たので落ち着いてきた。挨拶も自然に返せるくらいには。

 そして、そのまま腕を上げ、ナミの首に回して、抱き寄せる。少しだけ体を硬くしたナ

ミもすぐにおとなしく私に身を任せてくる。二人の唇が再び触れ合ったところで、お互い

目を閉じて、相手の唇の感触をしばし堪能する。

「あら、朝からおたのしみ?」

 突如の夏姉さんの声にパッとナミと離れる。

「いいのよ、そのまま続けてくれて、私も混ざろうかしら」

 夏姉さんの顔に妖艶な笑みが浮かんだのを見て、一気に頭が冷える。

「いえ、遠慮しときます。……というか遅刻しちゃうし」

「梢子ちゃん……残念です」

 心底残念そうなナミには悪いけど、こればかりはどうしようもないし……

「ダメよナミちゃん、梢ちゃんを困らせちゃ。さあ、朝ごはんにしましょうね」

 あなたがそれをいいますか、なっちゃん。

 とわいえ、ナミは素直になっちゃんについて行ってくれたので、私はなっちゃんのもっ

て来てくれたと思しき着替えに手を伸ばした。




 スパーンと勢い良くふすまを開けると、なにごとかという顔をした家族の視線がいっせ

いに集まる。

「梢ちゃんったらどうしたの? ……ダメじゃない服はちゃんと着ないと」

 明らかにとぼけていると思しきお答えに、おもわず怒鳴りそうになる。

「なっちゃん、ちょっと来てくれるかしら、あっナミたちはそのままでいいわ」

 とにかくそれだけを言うと、廊下に出た。なっちゃんもちゃんとついて来たようだ。

 適当に居間から離れたところで、なっちゃんを問い詰めることにする。

「なっちゃん、いったいこれはなんなのかしら?」

 そういって、着替えの中にあった下着を突きつける。それはTフロントで、TバッグでG

ストリングスな非常に心もとないデザインであった。おまけに色はきつめのピンクと来て

いる、生地がつやつやでまだ透けてはいないだけ良いのだろうか?

「なにって、梢ちゃんの趣味にあわせたつもりなんだけど、いやだったかしら?」

 いやだったかしら? じゃないわよ!

「こんなの穿いてるところ見られたら、まるっきり変態じゃないのよ。代わりの下着はど

こ?」

「ないわよ」

 へ? その言葉にきょとんとなる。

「全部処分したわよ。まあそれとあわせて買った似たのならあるけれど」

 ……どうやら、退路はすでに断たれていたらしい。時間もないし、ここは無いよりマシ

と思ってこれを穿くしかないようだ。




 駅の階段を、いつもより慎重にスカートを鞄で抑えながら一段一段確実に上がってゆく。

 電車の到着する音が聞こえており、駆け上がれば多分間に合うだろうが、そんなことは

とても怖くて出来ない。

 駆け出してスカートがまくれるどころか、うっかり転んでおしりを晒すことにでもなれ

ば、おそらくものすごく注目されてしまうだろう。きっと写真も撮られるに違いない。そ

して、ネットを介して全世界に私の痴態が……はふぅ。きっとエロ下着の女子高生!?と

か、青城のお嬢様のみだれた下半身とかあること無いこと書かれたり。やだ、見ず知らず

通行人に囲まれて、フラッシュをたかれるとこを想像したら一気に血が上ってきた。……

いやまて私なんで興奮するのよそこで。これじゃなっちゃんの思う壺じゃないのよ。とに

かくここはゆっくりとあせらずに……。

 なんていろいろ考えながら階段を上りきった時には次の電車の到着のアナウンスが流れ

ていた。

 たくさんの人に連なって混雑した車両の中へと乗り込む。これだけ密集していれば転ん

でしまうことも無いだろうと一息つく。運良くポールの傍に入り込めたので、ポールに少

しだけ体重を預けることにする。なんだかんだでちょっとラッキーだったかもしれない。

 …………

「きゃー! チカン! 何するのよ!」

 絹を裂くような叫びと共に、突然車内が騒がしくなる。わ、私じゃないわよ!私は見ず

知らずの娘にそんなことしたりする趣味はないし、今後一切しないと天にも地にも誓える

わよ。

 ああ、でも今つかまったらいいわけ出来ないかも。頭の中に私が取り調べられる様が結

像していく。

『あなたね、自分がなにやったかわかってるんですか?』

『いえ、その、私じゃありま……』

『嘘を言っても無駄ですよ、被害者の方の心の傷も考えなさい! みんながみんな貴方み

たいに淫らな考えの持ち主ばかりではないのですよ』

『そんな、私淫らなんかじゃありません!』

『へー、それじゃあなたのこの下着はなんなのですか? 普通の高校生のものにしてはず

いぶんと大胆なデザインですよね。』

『それは……』

『とにかく、あなたについては余罪も含めてしっかりと調べさせていただきます。』

 そ、そんなー

 なんだかんだで、部活のこととかナミのことまで調べられて私はすっかり恥女あつかい。

 知り合いも含めて回りからの冷たい視線が、遠慮なく突き刺さって……。やだ、そんな、

そんな目で見ないで、あんっ。

 ……はっ! いけないいけない、乗り過ごすところだった。

 やや慌てて電車を降り、また慎重に階段を下りて、改札を潜って、学校へと歩き出した。




 その後学校についてからは何事も無く、今は授業中。特に好きでもない教科なので私と

いえどもたいして身が入らず、ときどき剣道部のことに思考が飛んだりしながら、退屈な

時間が過ぎてゆく。

「えーと、ここを……小山内、お前やってくれ」

 どうやら、私は指名されたようだ、まあ予習もやってきたし答える分にはたいしたこと

はないだろう。

 緩慢な動きにならないように、さっさと立ち上がり、黒板の前にでてチョークを握る。

っと思ったら、つかみ損ねて下に落としてしまった。あっ、拾わないと。

 そこで、悪魔の誘惑のような思い付きが頭を掠める。いまここで拾うときに、脚を曲げ

ずにやったらどうなるだろう?

 今は授業中、私にはそれなりに注目が集まっている。もしここで体を前に屈めたら、ひ

ょっとしたら私の下着が教室中に晒されるかもしれない、

 そうなったら、そうなったら……

 あまりの自分の考えに、背筋がぞくぞくして、冷や汗が流れる、心臓がドキドキして、

血流が早まる、体温があがって、顔が赤くなる。

 「どうした、小山内? ……熱でもあるみたいだな。だれか保健室に連れて行ってやれ。

えーと……」

「はい、先生。私がつれていきましょうか?」

 どうやら、私が危険な賭けをするチャンスは失われたらしい。ホッとする反面、残念に

思う自分がいることが恨めしい。

「それじゃあ桜井、頼んだぞ。」

 綾代が前に出てきて、私の手をとってくれる。

「じゃあ、梢子さん行きましょう。」




 綾代につれられて廊下に出ると、気が抜けてついでに力も抜けてしまった。

「綾代、ちょっとごめん」

 そう一言断って、抱きつくようにして綾代に寄りかかる。

「まあ、梢子さん本当に大丈夫ですか?」

 綾代の胸に体を預けて、肩にあごをのせて、首筋に顔を寄せる格好になる。やだ、綾代

とってもいいにおい。鼻孔をくすぐる芳香が私の気分を再び興奮させてゆく。鼓動が高ま

って、吐息が熱を帯びてくる。

「梢子さん、熱いですよ。それに胸もこんなに……やっぱり私が何とかして差し上げます。

こっちです、ついて来てください」

「ちょっと綾代? そっちは保健室じゃないわよ」

「あら、梢子さんのは保健室で寝たら直るのですか?」

 綾代の艶然とした微笑に、私はもうすっかり見抜かれているのだと観念して、素直につ

き従うことにする。正直、どうにかなるならどうにかしてもらいたい。

 綾代につれてこられたのは、あまり人の来ない、その分綺麗なお手洗いだった。

「ここでするの? 綾代?」

「鍵のかかる手ごろな個室といえば、ここしかないでしょう。さ、梢子さん、して差し上

げますから適当な個室に入って腰掛けてください。」

 私が言われるままに、適当に個室に入ってふたの上に腰掛けると、続いて綾代も何の躊

躇もなく入ってきて、後ろでに鍵を下ろした。




「梢子さん、失礼します」

 綾代は断りともに私の上着に手をかけて、手早く私の胸をはだけさせていく。それと同

時に綾代自身も上半身の着衣を脱いで半裸になった。綾代の白い肌が目にまぶしい、胸の

とがりにある桜色が私を誘う果実に見える。これから起こるであろう出来事への期待に、

胸がドクンと大きく脈打つ。ゴクリとつばを飲み込んだ。

 目を閉じた綾代の顔が私の唇を求めて近づいてきたので、こちらからも迎えに行き、目

を閉じてキスを交わす。やわらかくて、あたたかくて、やさしいキス。ただ唇を合わせて

いるだけの行為なのに、とても甘美で、幸福を際限なく感じる。

 しばらくそのままの姿勢で、互いの体温を十分に交換し終わった後、名残を惜しむよう

にして唇を離した。互いの間に銀の糸が渡る。

 私はとろんとした目で綾代を見上げている。たぶん。

「梢子さんとってもカワイイです」

 綾代にそういってもらえて嬉しい。

「それじゃ、梢子さん楽にしててくださいね」

 そう言うと、綾代は私の乳房を両手で挟むように持ち上げて、顔を近づけてくる。

「いただきますね」

 ぱくりと、乳首を含む乳房の先端を口に含まれる。綾代の両手の指が不規則に乳房全体

を刺激する。唇と舌を使って先端が舐めしゃぶられるように遊ばれる。絶え間なく送り込

まれる快感に、乳房がまるで別の生き物になったかのように感じられる、熱くて、敏感で

全身に快楽を送り出す、そんな器官。

 多分乳首が硬くそそり立っているのだろう、綾代の舌をときどき返す感覚がある、その

舌が乳首に触れるたびに私の全身を甘い電流が流れる。ピリリ、ピリリと小さな稲妻に体

が翻弄される。

 「ひぁ、あん、あ、やん、どこ、あぅ、でこん、あぁ、なこと? ひゃん」

 あえぎつつも、疑問を口にして綾代を見下ろすも、本人は上目遣いに目で微笑んだだけ。

でもその表情が、またとんでもなくいやらしくて、なまめかしい。結局なにも答えてはく

れないまま、目を閉じた綾代は、私への奉仕を続ける。

 閉ざされた狭い空間に、私のあえぎ声と、ぴちゃぴちゃと湿った音だけが響く。

 綾代の動作に、揉む、舐めるだけではなく、歯で軽く加えてしごく動作が加わり、もは

や性器と化した私の乳首はその刺激にますます硬くなり、敏感になる。絶え間なく送り込

まれる快感に、頭がしびれて、視界がかすむ。

 綾代の動きの激しさが、頂点に達し、一瞬動きを止め、私の乳首が強めに噛まれた瞬間

に光がはじけて、頭が真っ白になった。

「はあ、はあ」

 私はこんなに息を乱しているのに、綾代は涼しげなんだろう?

「梢子さん、いかがでしたか?」

「あ、ありがとう綾代、少しすっきりしたわ」

 なんだろう、たまってたものを絞りだしてもらった気分。

「いいんですよ、お礼なんて。私と梢子さんの仲じゃないですか」

 でも、このまま借りを作りっぱなしなのは悪い気がするのだ。

「でも、なんだかされてばかりじゃ悪いと思うの」

「では、梢子さん、私のお願いをきいてくださいますか?」

「いいわよ。なにかしら?」

 軽く返事をしてしまったものの、まさかあんなお願いをされるとは思わなかった。




あとがき

オサMもついに4話です、ここまでお付き合いいただいた皆様ありがとうございます。

さて、綾代のお願いとはなんでしょうか? 作者も全然考えておりません! というわけ

で毎度毎度の事ながら作戦大募集です。皆様よろしくお願いいたします。



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             怖くないから一度おいで(はーと)