卯奈咲に来てから……常咲の椿に触ってから、身体が火照ってたまらない。

我慢していたけど、もう限界だ。

梢子は二十四時間入れるのが自慢だという、温泉風呂へ行くことにした。

闇夜にきらりと光る目があったことには気づかずに……。


「……んっ。はぁはぁ……んんっ」

ここなら一人になれる。汚したって構わない。

梢子は、右手は局部へ左手は大きな胸へと導き、一心不乱に慰める。

と、そこへ――

「じゃジャーン!秋田百子参じょーう!!ヒッヒッヒ、気づいてなかったですかー?一緒に入りましょーうオサ……先…輩?ええっと……」

思ってもみないシーンに二人して硬直する。

硬直から解けるのは、百子の方が早かった。

「すすすすいませんごめんなさい失礼しましたぁあああ〜」

ガラス戸をバタンと閉じて慌てて逃げ出す。


「――――っ」

驚いて火照りがどこかへ引っ込んでしまった。

梢子はばつが悪いので、そのままひとっ風呂浴びることにした。


百子は悶々としていた。自慰シーンなんて見るのは初めてのことだ。

学友がワイ談をするのに聞き耳を立てることはあっても、そこは女子高そして女子寮。

ちょっとイケナイ物を見たことは皆無だった。


オサ先輩がオナニーオサ先輩がオナニーオサ先輩がオナニいいいいい

うがぁあああ!ダメ!眠れん!

凛々しい先輩が艶めかしく喘ぐ様が、DVDのリピートのように何度も何度も頭の中で再生される。

実際には見ていない蠢く指や、絶頂に咽ぶ表情までもが浮かんでしまう。

ああん、ざわっちごめんなさい。と、心の中で謝った。


渦中の二人が悶々と眠れぬ夜を過ごして、次の日。


あたしはなぜ追いかけられているのでしょう。

なぜ一時間も走っているのでしょう?誰か教えてプリーズミー!

百子は梢子に追いかけられていた。

止まればすぐにその逃走劇も終わるのに、なんだかんだで8キロも走ってしまった。


「はぁ、はぁ……」

二人で汗だくになって喘ぐ。

「あたしたちなんで走ってたんでしょうねー……」

「――もう忘れたわ……あなたが逃げるからいけないのよ」

むう、それは理不尽な。

走ったお陰で、昨日の出来事もすっかりなあなあに出来そうな雰囲気だった。

だったのだが……。

「えーっと、ところで百子……」

梢子が恥ずかしそうな顔で百子に尋ねた。

「昨日の晩のことなんだけど……」


うわっ、きたっ!

今ですか。今きましたか!ここじゃどこにも逃げられませんよ!?

逃げる体力ももうありませんけどー

百子は、来る物が来たと目を瞑る。

「はい」

「みんなには内緒よ?」

「そ、そんなの勿論ですよ!いくらあたしの口が綿菓子のように軽いと言っても、あんな事言ったりしませんよ!あんな、あんな……」

二人して顔を赤くする。

昨日から共同作業が多いなぁ。

「約束よ?」

そう言って梢子は小指を突き出した。

どんだけ可愛い先輩ですか!


顔を赤くして二人、小指を絡め合った。