596 :名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 00:13:05 ID:NLtIAOPm

 ゆらゆらと、ゆらゆらと。わたしは波の中をたゆたう。夢と現の境を。

 意識はここが夢の中だと気づいてるけど、まなこに映る情景はあまりにも鮮明で――

 

 目の前に女の子がいる。肩で綺麗に切り揃えた黒髪、わたしを見つめる深い瞳。

 ああ、幼い頃の梢子ちゃんだ。

 「わたしは梢子。あなたは?」

 幼い梢子ちゃんがわたしに話しかける。わたし?わたしは――

 夢の中のわたしはたまたますみちゃんと入れ替わって外に出たわたし。だから、わたしはすみちゃん

なのだ。わたしは存在しないもの。贄として捧げられる日のために家族以外には出会ってはいけない者。

 だから、わたしはすみちゃんとして名乗るべきだったのに――

 「……つ……なみ」

 わたしの口から漏れたのはわたしの名前だった。

 「なみちゃん?よろしくね!」

 梢子ちゃんは無垢な笑顔でわたしに手を差し伸べる。『つ』の方はわたしの声が小さかったせいで聞き

取れなかったのだろう。わたしを『なみ』と梢子ちゃんは呼んだけれど。それでもわたしはわたしを呼ぶ

他人がいることが嬉しくて――その人にわたしの名を呼ばれることでわたしが確かにここにいるのだと

気づくことが出来て――

 「よろしくね、梢子ちゃん」

 梢子ちゃんの手を取る。伝わる梢子ちゃんの暖かさ。初めて繋ぐ他人の手。生きながら死にゆく

わたしを繋ぎとめる小さな手。


 その暖かさに包まれて、わたしの意識は水底へと沈んでゆく。眠りの淵へと。現への路へ――


597 :オサナミ2(最初に入れるの忘れたスマンコ):2008/05/25(日) 00:14:35 ID:NLtIAOPm

 浮かび上がってゆく、私の意識が。眠りから目覚めへと。

 しかし何時までたっても私のまぶたには光の刺激がやって来ない。目を閉じても、開いても、視界を覆

うのは暗い闇。もしかして夢と自覚しない眠りの中を漂っているのだろうか。だから私の傍で手を繋ぎな

がら眠りについたナミの小さな手のひらの温度が伝わってこないのだろうか。あるべきものがそこにい。

だから、これは夢に違いなく――

 でも、もし夢でないのだとしたら?

意識が急速に収束してゆく。何を寝惚けてるのだろう。真夜中でも目は覚める。では、ナミは?ナミは

どこにいったのだろう?

 人魚姫の最後は泡となって消える――こういう時に限って思い出す物語の終焉。そんな、まさか。

 慌てて身を起こし、周囲を見渡す。駄目だ。まだ暗闇に目が慣れていない。だから代わりに手を延ばし

ナミの姿を探す。

 緊張の瞬間はすぐに解けた。隣の布団へと向かった指先が柔らかな肌の感触に辿り着いたからだ。

 目を凝らし、よく見つめる。ふと眠りについたナミの姿が暗闇から浮かび上がった。ほっと胸を撫で下

ろす。まったく……我ながら何を慌てていたのだろう。眠りながら手が解けることぐらいあるだろうに。

ここ数日の間、この子と何時も繋ぎ合うのが当たり前のようになるほど私たちはずっと一緒にいたから

だろうか。今からこうでどうする。私は明日卯奈咲を発つというのに。

 

 その事実に思い至った途端、私の心に細波が広がる。ようやく帰れる安堵よりも、ナミと離れる寂寥感

が私を支配する。さんざん悩んだけれど結局ナミは咲森寺へ残ることとなった。私たちはまだ子供で、

連れて行こうにもナミと暮らすための準備も環境も何一つ整っていない。おじいちゃんに頼み込めば

あるいは、という望みもあるけれど。祖父にかかる負担を無視して我を突き通すことなど出来ない。

何よりも――いや一番子供みたいな考えかもしれないが――私自身の力でナミと共に過ごしたかったから。

 だから私たちはとりあえず離れて暮らすことになった。

 仕方が無い。仕方が無いことなのだ。けれど――

 細波は止まない。

 寄る辺もない心はどんどん沈んでゆき――せめて今この瞬間でもナミを感じていたくって。

 私の指先がナミの頬へと向かい、そっと撫で上げる。柔らかい肌触り。少し冷たいのが、寝起きで体温

が高めの今の私にはむしろ心地よく。――ナミは確かな存在としてここにいる。泡になって消えてたりし

ない。

 飽きずにナミへと触れ続く。やがて、私の手は止め時を失ってゆき――ナミのさらさらとした髪を梳い

ては、ナミの珊瑚のような小さい耳へと滑り落ち、そして――


598 :オサナミ3:2008/05/25(日) 00:15:20 ID:NLtIAOPm

 「……梢子ちゃん?」

 指先が触れた唇が突如開き、私の名前を紡ぐ。瑠璃色の瞳と視線が交じり合う。突然の事に私は焦った。

 「ご、ごめん。起きた?」

 無断で顔中に触れた後ろめたさで顔中がかっと火照る。暗闇だから見えないだろうけど、私は赤らん

だ顔を隠すためにナミの唇から手を離そうするも――

 ナミがその手を己の小さな手で掴み、私の手はナミの頬へと導かれる。

 「ナミ?」

 私の問いかけににっこりと微笑みを返す。

 「梢子ちゃんの夢を見ていました」

 「私の…?」

 「はい、8年前の夢を」

 「ああ……」

 不鮮明ながらも私の奥深くで掘り出される記憶の映像。

 『なら、こんな島、出て行けばいいよ!』

 『行く所がないなら私のうちに来ればいいよ!』

 ――幼い私はあまりにも純粋で、その純粋さゆえに現実を知らなくて。結局あの時の私は不可抗力と

はいえナミを置いて島を出て行ってしまった。

 だから、今度は――もう一度同じ台詞は言えばナミは私についてきてくれるのだろうか。きっと来てく

れる。そう、確信はあったけど、だからこそ私は何も言えず――

 代わりにナミの頬を撫で上げる。ナミはそっと目を細め、私の頬に、私の手が重なっていないもう片方

の手を伸ばそうとするも――起き上がったままの私の顔へは届かない。仕方ないので身を屈ませナミ

の手を迎え入れる。すると冷やりとした感触が頬に伝わってきた。

 ナミとの顔との距離がぐっと近づいた。ナミの全てを見透かすような瑠璃色の瞳に私の姿を映りこんで

いるのが見え――私はそこへ呑みこまれるような錯覚を覚える。その水底の闇へ溶けてゆくような。

夢と現の境目が歪み、深い深い海の奥深くへ。

 「梢子ちゃん」その最中でも私を呼ぶ声が聞こえる。人魚姫の歌い声。泡となって消えたりはしなかっ

たことに改めて安堵を覚える。

 「梢子ちゃんは私の初めての他人<ひと>……」

 歌声は続く。

 「わたしがわたしでいられる確かな存在」

 ナミの息吹が私の顔にかかる。ナミの香りが私の鼻をくすぐる。

 「でも、私は――」明日にはもう卯奈咲を――

 ナミは笑顔で首を左右に振る。

 「たとえ離れていても、もう一度梢子ちゃんに会えるとわかっているから、信じているから」

 だから大丈夫です。そうナミは囁いた。

 ああ――この子は強い。私よりもずっと小さな子供のように見えるのに、私なんかよりも強い意志を持

っている。

 「私ったら…駄目ね。ナミがほんの少し見えなかっただけでも大慌てだったのよ」

 「そうなのですか?」

 「縁起でもないけど、ナミが泡になって消えたんじゃないかと思って焦ったんだから」

 ナミは目をぱちくりと瞬き、私の言葉の意味に気づくとふわりと微笑む。

 「梢子ちゃん、わたしはここにいます」

 そして重なっていた私の手を己の小さな膨らみの方へ――

 「……!」慌てふためきそこから手を離そうとするも金縛りにあったかのように動かない。身体が動か

ないのではなく、心が縛られているのだ。

 「聞こえますか?わたしの心の臓の音が」

 「ええ」

 聞こえる。とくんとくんと。ナミの音が。早鐘を打つ私の鼓動が。

 「ナミ……」

 さすがの私もこの行為のなす意味がわからないはずもなく――

 理性は中止を訴えるけど――

 とくんとくん。

 「……いいの?」

 問いかけて無粋なことを訊いたと後悔する。何よりも今この瞬間は望んでいるのは私なのだ――

暗闇でナミの存在を確かめたかったのは私なのだから。ナミは私を導いただけで――

 「はい、梢子ちゃんになら」

 それでもナミは笑顔を絶やさず顔を綻ばす。そこで私の理性と欲求の境界が溶けた。


599 :オサナミ4:2008/05/25(日) 00:15:58 ID:NLtIAOPm

 沈黙が降り、吐息が絡む。その先にはナミの唇。招かれるまま私の唇もそこへ向かい――

 唇を重ね合う。

 キスをする時は目を閉じるもの。だから私は瞼を閉じる。広がるのは更なる闇。それでも不安はない。

しっとりと湿ったナミの唇がそこにあるのだから。

 唇の輪郭を頭で描きながら舌を這わせる。わずかに開いた隙間を発見し、迷わず舌先を差し込む。

そこは暖かい空洞で――しばし舌を彷徨わせた後、ナミの暖かい舌先に触れ、絡める。

 ぴくり、とナミは震えるも抵抗はなかった。むしろナミも私の舌を遠慮がちにつつきながら私を迎える。

 「……はぁ」

 「ん……」

 とくんとくん。手のひらから伝わる鼓動で思い出す。私の手のひらがナミの胸を包んでいるのだと。

服を覆う布地の上からナミの小さな膨らみをなぞるように指を滑らす。中心には私の指の行く手を遮る

硬い突起があり、私は敢えてそこを避けるように胸を撫でる。

 「ぁっ……んあ……」

 私の手によって身体を弾ませるナミ。息を吐こうにも私の舌のせいでそれも叶わず――

 「―――!んん!」

 私が突起を指先で挟むと、いよいよ苦しそうに身をよじらせ、私の唇から逃れようとする。

 興奮を抑えこむ。いきなり無理をさせすぎたのかもしれない。ナミの唇を開放し、胸から手を離すと、

ナミは大きく吐息を漏らし呼吸を整える。真っ白な顔が羞恥のためか、それとも刺激のためか朱に染ま

っている。その艶やかな姿にどぎまぎとする。

 「大丈夫?」

 「はい……」

 「その……痛かったり苦しかったりしたらちゃんと言うのよ」我ながら勝手な。言えないように唇を塞い

だのは他ならぬ私だと言うのに。

 それでもナミが笑みをこぼし頷いたのが、せめてもの幸いか。


600 :オサナミ5:2008/05/25(日) 00:16:29 ID:NLtIAOPm

 勢いが止まったせいか、今度はどうすればいいのかと悩む。当然ではあるが、私もこういうことは初め

てで――勝手というものが良くわからない。

 とりあえず……今度は呼吸を乱したりしないように、ナミの額にキスを落とす。無理をさせないように、

無理をさせないように。頭の中を呪文で埋め尽くし、唇を落とす先を下へと移す。赤らんだ頬へと、白くし

なやかな首筋へと。

 「ん……梢子ちゃん」

 更に下へ――襦袢の衿が重なっていない、露になった肌より下へ向かうために帯に手をかけ、解かす。

 「……」

 抵抗の気配はない。それでも少しばかり躊躇した後、衿を左右に広げる。

 開かれた先にある光景に、私は思わずごくりと生唾を飲み込んだ。

 別段初めて見る訳でもないのに――服を着替えさせたり、お風呂にも共に入ったのだから――か細い

月明かりに照らされたナミの裸体はとても幻想的で――

 ほのかな膨らんだ双丘、そこに乗っている淡い桜色の小さな粒、つるりとした下腹、くぼんだへそ、

そして――

 襦袢だから下着をつけていなかったのだろう。茂み一つない股の間にぴたりと閉ざされている割れ目

が見える。

 ナミは前を隠そうとせず、瑠璃色の瞳を潤ませ、首を傾げて私を見上げている。その幼い仕草と、

未成熟な身体に私は今更ながら――

 ………自分がとんでもないことをしているのではないかと焦りを覚えた。

 「……」

 「梢子ちゃん?」長い沈黙に不安を覚えたのだろうナミが憂いの眼差しで私を見る。

 「な、なんでもないわ」

 そう、今になって止めることなど出来るはずがない。落ち着け落ち着け――そうだ。ナミだけ脱いでい

るから余計に怪しく見えるのかもしれない。

 私はシャツに手をかけ、一気にたくし上げる。すーっとした夏の夜特有の涼やかな冷気が肌に纏わり

ついた。

 「―――!」ナミが微かに息を呑む。

 「どうしたの?」今度は私が不安を覚える番だ。

 「いいえ、その……すみちゃんのを見た時も思ったけど」

 ナミがもじもじと言葉を紡ぐ。

 「梢子ちゃんの胸……大人の人と同じなんだなと思って」

 「え」思わぬ言葉にかーぁと頬が熱くなる。

 「ごめんなさい。変なことを言って……」

 「ううん……」

 確かに戸惑ったけど、ナミとしてみれば起きてみたら私と保美が成長した姿でいたようなものだし…… 気になるのも仕方がないことだろう。

 「ねえ、ナミ……触ってみる?」

 ナミがしたように、ナミの手を取り私の胸へと招く。ナミは瞳を揺らし、少しの間悩むように目をふ

せた後に、こくりと頷いた。


601 :オサナミ6:2008/05/25(日) 00:17:04 ID:NLtIAOPm

 しかし予想していたナミの手の感触は来ず――かわりに思わぬ刺激に私は声を出してしまう。

 「あ…ん」

 ナミが起き上がり、私の胸に顔を寄せ、真ん中にある先端をちろりと舐めあげたのだ。

 「ちょっと、ナミ……」

 いきなり過ぎると抗議しようにも、私の身体は一瞬で力が抜かれて――

 ……ちゅっ…ちゅる………

 ナミが私のを啜る音が辺りに響く。ナミは乳飲み子のように一心に私のを舐める。血を飲む時もそうだ

ったし――この子にとってこれが自然な愛撫なのだろうか。

 「ん!くっ……」

 油断すればすぐに声が漏れそうになって私は必死に唇を紡ぐ。気を抜けば忘れそうになるけど――

ここは咲森寺の一室で、隣には部員たちが眠っているのだから。

 ナミは構わず私のを舐め続ける。温かな舌の感触に私の心は沸騰しそうになる。背筋を快感が駆け登る。

 いけない。このままでは完全に呑み込まれてしまう。

 刺激から気を紛らわそうと、私もナミの剥き出しの白い肌を辿る。瑞々しい肌から弾力が伝わってくる。

すべらかな表面に指を走らせ、お返しとばかりにナミの膨らみの敏感なところを弾く。

 「ふあっ!……」ナミが私の突起から口を離し、身を震わす。

 大きな声に私は焦り、声を止まらせるためにもナミの唇を唇で塞ぐ。もつれ合い、私たちは布団へと倒

れこんだ。

 それでも止まらない。ナミの、汗で額に張り付いた髪をかきあげ、再度舌を絡ませる。手はナミの胸を

まさぐる――さきほどの行為の続きのように。今度はナミも一緒に私の胸へ手を伸ばし――

 私の手でナミが小刻みに揺れる。きっと私も震えているのだろう。互いの愛撫に悶えて――


602 :オサナミ7:2008/05/25(日) 00:17:42 ID:NLtIAOPm

 いよいよ私は手を胸から離し、異なる場所へと向かわせる。くぼんだ下腹を撫で上げて、太腿の間に

あるナミの中心へと。しかし、ナミは足を閉じ、そこへの道を断たせている。初めての抵抗なのかもし

れない。それほど怖いのだろう。

 止めるべきだろうか――

 「梢子ちゃん、私は大丈夫です……」

 私の迷いに気づいたのだろう。息も絶え絶えにナミの唇が開く。

 「どうすればいいのかわからないだけで……」

 「でも……」ナミのそこはまだ成長しきっていない幼いもので――

 「梢子ちゃんを……ください」それでもナミは構わないと――

 「わかった」

 ナミに向かって頷き、膝を割ることで、閉ざされた足をゆっくりと開かせる。未熟なナミの秘裂が見えてくる。

 そこは今までの行為ですっかりと濡れそぼり――間には小粒な蕾が顔を出し、奥には鮮やかな桜の

襞が覗き見える。羞恥に耐えられないのだろう。ナミはじっと目を閉じ、震えながら私の視線に逃れよう

としている。

 「痛かったらちゃんと言うのよ?」

 「はい」

 まったく……返事とは裏腹にナミはきっと痛みにも耐えようとするだろう。だから私がこの子を気遣って

あげなくてはならない。

 ナミのそこは溢れるほど潤み、今にでも私の指を迎えられるかもしれない。それでも相手の身体は

まだ幼い少女だ。慎重を重ねる必要がある。

 だから私は股の間に顔を近づけ、舌でナミの秘所を舐めとった。

 「ああっ!」

 ナミの身体が弾む。大きな声を咎めることは出来なかった。私は舌先を差し入れナミのそこを更に濡ら

せる。蜜が舌に絡みつく。不思議な味だった。海の味のような――

 「んっ……あっ……ああっ……」

 ナミは両手で自分の口を防ぎ、湧き上がる声を必死に抑えている。ナミも隣に皆がいることに思い至

ったのだろう。どちらにしろ私のやることに代わりはない。ナミの痛みが少しでも和らぐよう、ナミの秘所

に唾液を含んだ舌を這わせ、潤いを与える。


603 :オサナミ8:2008/05/25(日) 00:18:09 ID:NLtIAOPm

 そろそろ頃合だろうか。舌を離し、様子を伺う。何せ経験がないのだから、判断のつきようがない。

 しかしナミの方はもう限界だ。ぐったりと力の抜けた身体を後ろから抱き起こす。

 「ナミ、そろそろ……」

 本当にいいの?と視線で問いかける。ナミはこくりと頷く。ナミの意志に変わりはない。私は私で出来

る最善のことをしよう。この子に傷がつかないように。つらい思いをさせないように。

 左の腕でナミを抱き上げ、私に寄りかからせたまま、ナミの秘裂の間にもう片方の手の指を差し入れる。

 そこは零れそうなほどに濡れていて――

 思っていたほどの抵抗もなく私の指を受け入れる。

 「はぁ――」

 ナミは私にしがみつき、熱い吐息を漏らす。私はしっかりとナミを抱きとめ、更に指を滑らせる。指を浸

すぬめりに誘われて、奥へと奥へと――

 「んん……んん……あぁ……」

 途中で押し戻される感覚。ナミが苦しそうに呻きはじめる。ナミが私の腕を掴み、指を食い込ませる。

 「ナミ、痛いの?痛いのね?」

 ここまでか。私は指を引き抜こうとして――

 ナミの手によって止められた。

 「ナミ!」やはりこの子は無理をしようとしている。

 「梢子ちゃん、お願い。このまま……」

 ナミが振り返り、私に口づけをする。切実な願いに私の胸は詰まり、止め時を失って――

 唇を重ねたまま再び指に力を込める。進んでゆく。途中途中で襞をくすぐりながらゆっくりと。

 奥へと、中心へと。

 いや、私は導かれているのだ。

 私を包み込み、押し寄せては、引いて――それはまるで波のようで―――

 何度も何度も、私の指はナミの中でゆらめく。

 不思議な感覚だった。私はナミの中に私の指を入れながら、私の中にも何かが――暖かい心地よい

何かが流れてくるような。

 やがて、ナミの呻きも、甘い啜り声と化し――

 私は今まで以上に力を込め波の中を跳ねる。

 「梢子ちゃん――!」

 そして一際大きいナミの声が放たれ――

 「ナミ!」

 私は波打つその肢体を強く強く掻き抱いた。


604 :オサナミ(ラスト):2008/05/25(日) 00:18:44 ID:NLtIAOPm

 私はナミを抱いたまま横になり行為の余韻に浸る。

 「梢子ちゃん、ありがとうございます」

 「お礼を言うようなものじゃないでしょ」

 「それでも…嬉しかったから」

 ナミは私の身体に己の腕を差し込む。自然と私たちは抱き合うような形になった。

 「本当は少し不安だったんです。明日から梢子ちゃんがいなくてわたしはどうなるのかと」

 ナミの心の内が曝け出される。

 「8年前も、今この瞬間も、私を繋ぎ止めてくれるのは、梢子ちゃんがわたしを呼ぶ声。梢子ちゃんが

わたしに触れてくれる暖かさ」

 あなたがいたからわたしはわたしでいられる――瑠璃色の瞳に光を湛えながらナミは告げる。

 「梢子ちゃん、大好きです」

 不意の告白。ここまでしたというのに私の心は再びどきどきと大きく揺らめいて。その波に攫われる勢

いで私も勇気を出し――

 「私も好きよ、ナミ」

 「……はい」

 顔を見合わせ微笑み合う。大丈夫。たとえ離れても私たちは笑顔でいられる。これが今宵の別れでは

ない。私も信じられる。ナミと再び会えるのだと。

 「今度はわたしが梢子ちゃんの所に遊びにいってもいいですか?」

 「いいわよ、何時ごろ来れそう?」

 「冬に…クリスマスの時とかに」

 「もっと前に来ても構わないのに」私に遠慮でもしているのだろうか。

 「その……恋人同士が一緒に過ごす日だって聞いたから」

 ナミが耳まで真っ赤に染めながら呟く。

 「あ……」――誰に聞いたのだろう。そんな疑問はさて置き。

 「うん、じゃあ今度のクリスマスの時に」私はナミを抱きしめて、その小さな耳に囁く。きっと私の顔も

とんでもなく赤いだろうか、それを隠すためにも――

 ナミは頷き返し、私たちは共に寄せ合い、ほんの少し遠くも近い未来に想いを寄せる。

 これからも、どこへいようとも、私たちは互いに繋ぎ合い、傍にいよう。波に導かれるままに。


 遠くに聞こえる波の音に私たちは耳を傾けながら、忍び寄る眠気に身を委ねた――