536 :名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 04:47:42 ID:m9+P1/qe
「ねぇ綾代」
「何でしょう、梢子さん?」
「最近、保美の様子が変だと思うんだけど……」
私は、素振りをしながら綾代に問いかけた。体育館は騒がしい音に包まれ、部員全員の竹刀は何度も空を切っている。
合宿から帰って来た私たち。合宿先の卯奈咲や咲森寺、卯良島では色々あったけれど、私は保美を守ったではないか。私は、保美の笑った顔が好きなのに……。
帰って来てからの保美は何かぎこちない。
まるで……。
まるで、西洋人形のようだ。
保美は、虚ろな瞳で、私を見ていたりする。あとは少し怒った感じの目をしたり。
保美の両手には竹刀はあれど、入部したばかりのようにいつ飛び道具になっても可笑しくはない状態だ。体力は付いたと思うのだけれど。
「そうですね……くすっ……梢子さんを疑っているみたいです」
何が可笑しいのだろう。笑い声を漏らすなんて……。
私は顔をしかめていたのか、
「ごめんなさい。なんだか、微笑ましくて」
綾代は申し訳なさそうに、でも笑顔でそう言った。
「一度保美ちゃんと話してみてはどうです? もうすぐ部活も終えなければいけない時間ですし」
顔を少し上げて体育館の時計を見ると、時刻は六時を過ぎようとしていた。
「そうね。終わりにしましょう」
道具の片付けをしていると、残っている部員は保美と百子と私だけになっていた。
保美の瞳は相変わらずとぼんやりとしている……。
「オサ先輩、オサ先輩」
「何? 百子」
着替えの途中で、後ろから百子の声が聞こえた。しかし、振り向かずに対応する。百子の猫なで声は確実にいいものでは、ない。確実に、絶対に、だ。
537 :名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 04:51:33 ID:m9+P1/qe
まぁそれは無視して、保美は何故あんな目を――
「更衣室の鍵がここにあります。扉は内から鍵が掛けられます。しかーし! こちらから細工をしてしまえば、ざわっちとオサ先輩は袋のラビットちゃんです」
「はぁ? それが?」
私は、妙に芝居がかった声に耐えきれず、溜め息にも似た声を出していた。振り向くと、扉のすぐ近くにいる百子の含み笑いを見ることになった。いや、これは不吉な笑いと言ってもいい域か。
ちょっと前に、気付いていればよかった。
百子が私と保美を「閉じ込めようと」していることを。
「あっ! ちょっと待ちなさい百子!」
着替え中にも関わらず走り出していた。しかし、私の手は百子には届かず、竹刀のように空を切り……。
ガタンッ!
カツッ……
扉を閉める音とほぼ同時に、何か軽い音がした。
悪い予感も同時に浮かんだ。
私は恐る恐る見えない相手に問う。
「百子。まさかとは思うけど、竹刀みたいな棒とか、立て掛けたりしてないでしょうね?」
「ふふん。どうでしょうー」
「すぐに開けないと怖いわよ? 早く開けなさい!」
「……そんなこと言ってオサ先輩。今開けても後で開けても、怒るのは目に見えているのですよー! 鍵はそちらにお渡ししてますし、あたしは寮に戻るのでお二人でごゆっくりと」
「待った! ほら、食べ物とか飲み物とか! 布団とか!」
自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。鍵はいつの間に置いたのか、扉の前に落ちていた。
ぼうっとしていた保美も、流石に危機を感じたのか、
「……百ちゃん?」
「ふっふっふっ、この百子さん、そのへん抜かりありません。辺りを探してみよ!」
538 :名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 04:53:51 ID:m9+P1/qe
私と保美は周りを見渡した。すると、隅に置かれた毛布、透明なペットボトルと黄色と黒の缶、菓子パンの類いが確認出来た。黄色い缶の方はもしかしなくても。……レックスコーヒーだった。
「……くぅ、これもざわっちのため……邪魔者の百子さんは退散するとしますですよ! あ、先生とオサ先輩の親御さんには言っておくので安心していいオッケーでーす」
百子らしき足音はやがて聞こえなくなり、更衣室には私と保美の二人だけが残された。
開かないと分かっていながらも、少しの淡い期待を込めて扉の戸に手を掛けた。
……全く開かなかった。竹刀くらいだったら隙間から出られたのに。
…………。
二人して、沈黙。いや、呆気に取られていた。
不安そうにしている保美に何かしてあげなければ。そう思ったけれど、私にはそんな気が利くようなことは出来ず、気分を紛らわして喋りかけることしか出来ない。……いい方に考えれば、保美と話すチャンスなのかもしれない。あくまでも、いい方に考えれば、だが。
「保美」
「なんですか? 梢子先輩」
何気に棘のある答え方だった。……少し、怒ってる……?
「喉、渇かない……?」
「渇きますね」
私は「どうぞ」と二リットルペットボトルに入った水を手渡す。百子のやつ、わざと大きいペットボトル一本を置いていったな……。これじゃ間接キ――
「梢子先輩、先にどうぞ」
声に気付くと、保美は顔を赤らめ、うつ向いてペットボトルを差し出していた。断る訳にはいかない。保美なりの配慮なのだろう。さっきの棘のある感じはしなかった。
「あ、ありがとう……」
こくっ……こくっ……こくっ……
喉を潤すと、再度保美にペットボトルを手渡した。
私は、保美が細い両腕でペットボトルを持ち、目を閉じて喉を鳴らす様を見ていた。
……ん?
私は保美の表情の変化を見た。微笑んでいた。
539 :名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 04:57:28 ID:m9+P1/qe
「保美? 何笑ってるのよ」
「んんっ……はいっ? 梢子先輩の飲みかけを飲めて嬉しいなーとかやっと二人っきりだなーとかなんて一切思ってないです! 本当です! あ……わ、わたし、笑ってました?」
「くすっ……」
一気に言い終えてから「しまった」と言うように、悲しそうな顔をした。
私は保美が持っていたペットボトルを床に置き、保美の唇から溢れた水を手で拭った。
「やっ……!」
手を払いのけられた。
私はまたもや呆然としていると、
「梢子先輩が悪いんです。綾代先輩と楽しそうに話したりなんかして……わたしなんかどうでもいいって感じで……。それで……」
「それで、口数が少なかったわけね」
「〜〜〜〜!」
怒ったり恥ずかしがったり、忙しい子だ。だから面白い、いや、好きなのだけど。
「保美。私には、保美だけだから……」
「……はい」
頬を赤く染め、うつ向く様がとてもいとおしい。
そんな保美に、私は意地悪をしたくなった。少し困らせるくらいはいいだろう。気の弱い彼女はどんな反応をするだろうか。
「私は、保美にどう思われてるのか不安。ほら、私って無愛想だし。保美が私以上に愛してくれてるなら……キス、して……」
……最初は保美を困らせるつもりだったはずなのだが、自分で自分の首を絞めている気がする。最後の一言で身体が熱を持つ。私の顔が真っ赤になっているのが目に浮かぶ。私は右手で顔を隠した。
保美は「いいですよ」と、思っていた表情とは違う、柔らかな笑みを浮かべて近付いてくる。私より全然余裕そうな笑顔……。
そんなに広くはない更衣室。どうしようどうしよう、などと考えている暇もなく。
「ん……んんっ……ふぅ……」
保美は私の唇を奪った。
甘い吐息が漏れる。それはどちらのものかすら分からなくなるほど、私はぼうっとしていた。肩に掛けられた保美の手に、ぎゅっと力が入るのが分かる。さえぎられた唇。苦しいと思う頃には、もっと保美が欲しくなっていた。
「や、保美……」
「先輩、触って欲しいですか?」
こうやって喋っていて、唇を離すことさえ嫌なのだ。
私はこくりと頷いた。
540 :名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 05:15:37 ID:75/yZgER
愛しいひとの腕が、手が、指が、私の身体に触れている。まだ着替え途中だった私の制服は、ネクタイをしていなく、すぐに脱がされて下着姿になっていた。
「先輩はここが弱いんですよね?」
「ひゃっ!」
首筋をなぞられ、びくっと反応してしまい、思わず高い声が出る。
「かわいい声……もっと、もっと梢子先輩を……」
保美は恍惚とした表情で私の下着を脱がせ、じっと見ていた。
その視線を感じ、私は……私は脱がされた制服と下着の上にぺたんと座り込み――
もっとして、と保美を見上げた。
そう、例えるならば褒美を待つ犬のように。
保美は微笑んで、私の頭を撫でた。途端に押し倒される。保美が馬乗りになり、
胸を触られる。両手で揉まれ、気持ち良さに声が出てしまいそうになるが、目を閉じ、耐えるようにして息を飲み込む。
声を我慢していると、苦しげに吐き出す自分の吐息すらも、いやらしいもののように聞こえ――
「あっ! んあぁぁぁ!」
胸の先端に、痺れるような……痛みにも似た快感が襲ってくる。目を開けると、保美は指と舌で私の胸の先端を転がしていた。
「声なんか我慢してるからですよ……梢子先輩……わたし、もっと先輩に感じて欲しいです……」
「やっ、やすみっ! 十分、感じ、て……っ……あっ!」
敏感な部分を指と舌で弄られ、私は喘ぐことしか出来なかった。
やがて保美の手は下の方まで来て……私の耳元で囁いた。
「濡れちゃってます……結構いやらしいんですね」
「ち、違っ……保美が触るか……らぁ……あ、んんっ……」
「かわいいです、梢子先輩……」
グリグリと秘部を押され、自分でもぬるぬるとした感覚が分かる。くちゅりと静かな音を立て、保美の指が入ってくる。
一番気持ちいい所を触られ、私の脳はそれ以外を考えることが出来なくなった。
「や、保美も……」
保美は控えめに頷いて、制服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿になった。
綺麗で華奢な身体は、抱き締めたら折れてしまいそうなくらいに細く……。
私は首の辺りに手を掛けて保美を引き寄せた。熱い体温に私は感じさせられる。
片方の胸に吸い付き、秘部を弄る。
541 :名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 05:17:11 ID:75/yZgER
「んく……あんっ! あ……う……」
保美は私の上に倒れ、重なった。
トクン、トクン、トクン……
速めの鼓動が伝わり、また私を熱くさせる。
「キス、して……いっぱい触って、いっぱい愛して。
はぁ……他のことなんてどうだっていいから……保美、好きっ……!」
途切れ途切れにならないように一生懸命に伝えると、保美は目を潤ませ、
「わたしもです」
瞬間、保美はキスして唇を塞ぎ、私の中を掻き回した。
私の身体は電流が流れるようにびくつき……。
「あっ! あっ! そんなにしたら、私……!」
「はぁ……はぁ……イッちゃいそう……ですか……? わたしも、先輩に触られてるだけで……」
「保美……ちゃんと名前で……呼んで……んんっ! もう、きちゃうっ……!」
「梢子先輩! 梢子先輩! 好きです! 大好きです!」
「ふぁぁぁぁぁぁぁ!」
私たちは同時に絶頂へと達し……
ガラッ
「い、いやー『オサかん』なことで……あのー、あたし、先生に怒られてですね……二人を出してこいと……言われて……。
鍵をせっかく渡したのに掛けてない方が悪いんですー!
はぁ……逃げるが勝ちと言いますし!」
「百子ーーーーー!!」
私は走り去る百子の背に、大声で叫ぶことしか出来なかった。