ざぁぁ・・・ざぁぁ・・・ざぁぁ・・・



風にのった豪雨が窓に打付ける音が停電してしまった真っ暗な室内に響く。

まるでアパート全体が悲鳴を上げているようなその音に私は少しだけ不安を感じた。

「凄い雨・・・」

「季節の変わり目だからね。でも、局地的なモノだと言うから朝までには止むと思うし、その頃には停電もきっと直るよ。それに・・・」

衣擦れの音がしたと思った刹那、私は後ろから優しく抱き締められる。

「大丈夫・・・何かあっても桂さんは絶対に私が守るから・・・」

蝋燭の火に照らされた最愛の人−烏月さんの心強い笑顔と衣服越しに伝わってくる温もりに安心した私は小さく、うんと頷いた。


経観塚の事件から10ヶ月。

季節は再び、夏を迎えようとしていた。

お母さんの一周忌の準備をしながら、私は時々、一年前を振り返る。

お母さんが死んだ時は、一人ぼっちになってしまったと感じることもあった・・・。

けれど、あの事件を通じて私はまた、かけがえのない沢山の人と知り合うことが出来た。

千羽烏月さんもその一人。

烏月さんは『鬼切り』という大変な使命の合間を縫って、こうして私の所に頻繁に顔を出してくれる。

そんな事を繰り返しているうちに私と烏月さんとの間には特別な絆が生まれていた。



「それにしても、停電まで起こるとはね。色々と準備してきてよかったよ」

「ごめんね・・・いつもいつも迷惑ばっかり掛けて」

「桂さんが気にする事はないよ。私も好きでやってる事だからね」

「でも・・・」

「ふふ。私は桂さんにそんな悲しそうな顔をされる方が辛いよ」

普段とは違い、はにかんだ笑顔で冗談っぽく話す烏月さん。

思わずドキッとしちゃった・・・。

「あのぅ・・・迷惑ついでにもう一つお願いがあるんですけど・・・」

「なんだい?私に協力できることなら力になるよ」

「その・・・」


・・・カッ!!ごぉぉ!!・・・


「きゃあ!!」

突然、室内が白く照らされたと思うと同時に雷鳴が轟いた。

あまりの音の大きさに怯えた私は烏月さんにしがみ付く。

「桂さん!!大丈夫かい?!」

「びっ、びっくりしたぁ・・・」

私を安心させるように烏月さんは優しく背中をぽんぽんと叩いてくれた。


しばらく、その状態で心を落ち着かせた後、私は勇気を振り絞って烏月さんの顔を見上げる。

「ごめんなさい・・・あの・・・一人で寝るのが怖いから・・・一緒に寝てくれませんか・・・?」

「えっ・・・?」

私に言葉に今まで見たことのない表情を浮かべながら、口を開けて烏月さん。

子供っぽい・・・って思われちゃったかなぁ・・・。

そんな事を考えながら、私が不安に思っていると烏月さんは突然、クスクスと笑い始めた。

「ふふ・・・私は寝相が悪いけど、それでもいいのかい?」

懸命に笑いを堪えながら、烏月さんは小さく呟いた。



「ん・・・」

眠りが浅かったのだろうか、私は唐突に目を覚ました。

依然として外からは雨が打ちつける音が聞こえてくる中、ふと隣を見てみる。

『うわぁ・・・』

私の目と鼻の先で、烏月さんは私の方を向きながら静かに寝息を立てていた。

そのあまりに美しい寝顔に思わず、溜息が零れる。

整った顔のライン。閉じられた瞳から覗く長い睫毛。額にかかるサラサラの黒髪。

まるで日本人形の様な神秘的であどけない寝顔に私の鼓動が高鳴る。

『柔らかそう・・・』

ほんの少しだけ開かれた口唇を見つめてしみじみと思う。

・・・ちょっと、触れるだけなら大丈夫だよね・・・

一応、周りを確認した後、私はゆっくりと烏月さんの顔に自分の顔を近づける。

徐々にその白い肌が目の前に近づいてきて・・・。

二つの影が一つに重なった・・・。

始めて重ねた烏月さんの口唇は、柔らかくてとても熱かった。

とその時、烏月さんの目がゆっくりと開かれた。

「んっ・・・けい・・・さん?」

「ひゃっ!」

私は慌てて顔を離す。

「桂さん・・・何を?」

「違うの・・・その・・・柔らかそうだったからつい・・・」

恥ずかしさのあまり、私は布団に包まりながら烏月さんにひたすら謝る。

うぅ〜、嫌われちゃったかなぁ・・・。

「ふふっ」

ゆっくりと布団が捲られて、微笑んだ烏月さんが私の顔を覗き込んだ。

「烏月さん・・・?」

「私は桂さんさえ、良ければ構わないよ」

「えっ?それって・・・んんっ?!」

私が烏月さんに問い返そうとした時、烏月さんの柔らかい口唇が強く押し当てられた。




「ん・・・んちゅ・・・んん」

烏月さんは啄む様に私の口唇を吸う。

それに応える様に私も烏月さんを受け入れる。

二人の唾液が混ざり合い、淫靡な水音が鼓膜に響く。

ゆっくりとお互いの顔が離れた時、烏月さんの口から零れた唾液が私の頤を伝った。

「はぁはぁ・・・烏月さん・・・」

「すまない・・・嫌だったかな?」

切なそうな表情を見せる烏月さんに私は首を横に振る。

「ううん。そんなことないよ・・・だって、烏月さんは・・・」

私は深呼吸をすると烏月さんの目をまっすぐ見つめた。

「烏月さんは誰よりも大切な人だもん。私は烏月さんの事、大好きだよ」

「・・・ありがとう、桂さん」

再び、烏月さんは口唇を重ねてきた。

今度は私が烏月さんの口内へゆっくりと舌を伸ばして、烏月さんのそれを優しくつつく。

最初は控えめだった烏月さんも私を受け入れて、ゆっくりとそれを絡ませあう。

甘い唾液が口内に流し込まれ、私はそれを貪る様に啜る。

「うむぅ・・・んく・・・ぷはぁ」

口付けを離した時、二人の間を透明な糸が繋ぐ。

烏月さんは潤んだ瞳で私を見つめると、ゆっくりと私の首元に顔を埋める。

「桂さん・・・いいかな?」

「・・・優しくしてくれる・・・?」

私の言葉に烏月さんは微笑みながら頷くと、パジャマの釦に手を掛けた。




器用な手付きで私はあっという間に身に着けていた物を脱がされて生まれたままの姿になる。

「うぅ〜、恥ずかしいから烏月さんも脱いでよ〜」

「あ、あぁ・・・」

神妙な面持ちで烏月さんも服を脱ぎ始める。

下着を外し終えると、夜目にも生える白く美しい肌と豊かな双丘が私の目に映った。

その整ったプロポーションに目を奪われた私は引け目を感じてますます恥ずかしくなる。

そんな私の視線に気づいたのか、烏月さんはクスクスと笑うと私の身体に手を伸ばす。

「ふふ。桂さんの身体だって充分、綺麗だよ。それに・・・」

「ひゃっ!!」

冷たい手が身体に触れて私は思わず、声を挙げてしまう。

「これくらいの大きさの方が可愛くて私は好きだよ」

ゆっくりと円を描くように烏月さんは私の胸を弄び始める。

少しずつ・・・だんだんと激しく・・・

その行為に身体の芯が熱く火照って来て、肌がじっとりと汗ばんでくる。

熱の籠った吐息が自然と口から漏れる。

「はぁ・・・ふぅん・・・」

「桂さん・・・」

「んあぁ!!」

突然、胸の突起を生暖かく滑った感触が包んだかと思うと歯で軽く甘噛みされて、身体中に電気に似たモノが貫いた。

「あぁん!!・・・やぁ・・・」

「ふふ。もう、こんなに硬くなってるよ」

「ん、あぁぁ!・・・だめぇぇ!」

烏月さんは尖りきった先端の片方を舌で転がしなら、もう片方を指の腹で摘みながら擦って来る。

唾液がぬっとりとまとわりつく感触と少しの痛みをまとった感触。

同時に違う快感を味わい、私の口から悲鳴と懇願の入り混じった嬌声が漏れる。

「やぁん・・・そ、こは・・・んあぁ!」

「桂さんは敏感なんだね・・・」

「あっ、あぁっん!!」

私の反応を楽しむ様に、烏月さんが乳首を捻り挙げるとビリビリとした快感が全体に走った。

声を抑えることの出来ない私は、鋭い嬌声を漏らし、大きく肩で息を吐いた



「はぁ・・・はぁ・・・」

初めての刺激に頭がぼーっとしてくる。

烏月さんはそんな私を可愛がる様に、首筋に舌を這わせてきた

「っっ!・・・んっ」

鎖骨・・・肩・・・胸・・・わき腹・・・

少しだけ突付くような口付けにもどかしさと熱さを感じ、鎮まり掛けた疼きがまた襲ってきた。

そんな私を焦らす様に烏月さんは浮いた汗を舐め取りながら、徐々に下腹部に移る。

「う、づき・・・さん・・・」

私は差恥心を感じて思わず、脚を閉じた。

「桂さん・・・」

切なそうに潤んだ瞳で私を見上げる烏月さん。

「怖いのかい?」

「ううん・・・優しくしてくれるんだよね・・・?」

「あぁ。桂さんを傷付けるようなことはしないから・・・」

烏月さんの言葉に頷くと、私は力を抜いて自分から脚を開く。

昂ぶった私の秘所は恥ずかしいほど濡れている。

その部分を見つめる烏月さんが生唾を飲む音がはっきりと聞こえた。

「あ、あんまり見ないで・・・」

「・・・凄く綺麗だよ・・・」

突然、艶やかな黒髪が動いたかと思うと、烏月さんは私のそこに顔を埋めてきた。

「や、やだぁ!!汚いよぉ」

私は必死に烏月さんの頭を押さえるが、濡れそぼった秘所にゆっくりと口唇が当てられた。

「あぁん!!んっ、はあっん!!」

・・・ぴちゅ・・・ちゅぱ・・・じゅちゅ・・・

淫靡な粘着質の音が部屋に響いて、それが今までより激しい快感と羞恥心を煽る。

敏感な陰核が強く吸われて、私の意思とは反対に大量の愛液が溢れてくる。

「ひゃあん!そ、そこ・・・ん・・・あはぁっ!」

私はシーツを強く握り、襲って来る刺激に耐えるしかなかった・・・




「ちゅう・・・はぁはぁ・・・桂さん・・・」

口付けをやめて、顔を挙げる烏月さん。

口の周りについた私の愛液を舐め取りながら、妖しく光る瞳で私を見上げる。

「私も桂さんと一緒に気持ち良くなりたい・・・」

烏月さんはそういうと上体を起こして、私に身体を重ねてきた。

熱く濡れた烏月さんの秘所が私のそこに擦り付けられる。

「んんっ!!」

灼熱感が全身を貫き、思わず腰が浮く。

「行くよ・・・」

小声で呟くと烏月さんはゆっくりと腰を動かし始める。

重ねられた秘所がくちゅくちゅと水音を立てる。

「はぁっ!あぁっ!んぁ、あぁんっ!」

「あぁぁぁ!!う・・・づ、き・・・さぁん・・・あんっっ!」

頭が真っ白になって、快感に支配されそうになる。

私は助けを求めるように、烏月さんの手を握り、しっかりと指を絡める。

烏月さんも答えるようにしっかりと握り返してくれた。

・・・私達は身も心も繋がっている・・・

そう思うと身体の奥から、更なる快感が突き上げてきた。

「ぁぁん!!だ、だめぇ!!・・・なん、か、あ・・・き、きちゃうよぉ・・・」

「はぁ、っん!!け、け・・・いさん・・・わ、たしも・・・もう・・・」

掠れた嬌声を挙げながら烏月さんは腰の動きを早める。

私もそれに合わせるように火照った秘所を押し付ける。

あまりの熱に身体が溶けそうな錯覚を覚え、私は烏月さんの手を強く握る。

尖りきった陰核が激しく擦り合わせられた時、絶頂の激しい快感が押し寄せてきた。

「烏月さん・・・!烏月さん・・・!だ、めぇ・・・あ、ん、あん!んあぁぁぁぁッ!!」

「っく・・・桂さん!!やぁ、ぁ、ぁあぁぁっ!!」

二人の秘所から勢いよく愛液が噴出し、身体に飛び散る。

ぐったりと力が抜けてしまった私達は口付けを交しながら、まどろみの中に落ちていった・・・。



瞼の裏に光を感じる・・・

「ん・・・」

ゆっくりと目を開けると差し込む朝日と烏月さんの美しい寝顔が視界に入ってきた。

私は烏月さんを起こさないように布団から抜け出し、近くにあった上着を羽織る。

カーテンを開け、静かに窓を開く。

「うわぁ・・・」

そこには昨夜の豪雨が嘘のような青空が広がっていた。

東の空から昇ってくる太陽を見て私は大きく伸びをする。

ひんやりとした風が気だるい身体に心地よかった。

「・・・おはよう桂さん」

名前を呼ばれて振り向くと、烏月さんが布団から起き上がっていた。

「あっ、ごめんね。起こしちゃった?」

「大丈夫だよ。いつもこれくらいの時間に起きるからね」

「ふぅ〜ん、早起きさんなんだ」

規則正しい烏月さんに感心しながら私は隣に立った烏月さんに甘えるように少し寄りかかる。

「昨日のは、夢じゃない・・・よね?」

「ふふ。桂さんは可愛かったよ」

「もう!恥ずかしいこと言わないでよ〜」

「ふふ。ごめんごめん」

頬を膨らませて講義すると烏月さんは微笑みながら優しく私を抱き寄せてくれた。

「・・・これからもずっと一緒に居てくれるよね?」

「あぁ・・・言ったはずだよ、何かあっても桂さんは絶対に私が守るってね。私はいつまでも桂さんと一緒だよ」

「うん!」

嬉しさのあまり、私は烏月さんの頬にキスをする。

少し驚いていた烏月さんも体勢を変えて、私に応えてくれる。

夏の薫りを含んだ、澄んだ涼風が部屋に吹き込む中、私たちはいつまでも口付けを交し合っていた・・・。


どんなに時間が経って、季節が巡っても、私達はずっとずっと一緒です・・・