「・・桂さん、すまない。・・許してくれないか・・?」
「・・・烏月さんなんか知らないもんっ。」
そう言って、わたしは烏月さんに背を向けるとそのまま布団をかぶってしまう。
背中越しに聞こえるため息。そして、あきらめたかのように烏月さんは電気を消しながら小さな声でつぶやく。
「おやすみ、桂さん・・。」
「・・・・。」
おやすみの挨拶に無言で答えながら、彼女の悲しそうな声に思わず胸がちくりと痛む。
30分前。
わたしと烏月さんは布団を並べて、寝転がりながら烏月さんの学校で先日行われた学園祭の写真を二人で眺めて語り合っていた。
そこには、普段知ることのできない、学校生活を送っている烏月さんが写っていた。
前に学校には親しい人はいないようなことを言っていたけど、この写真を見ると皆から慕われている様子が強く伝わってきた。
そうして、何枚か見続けていると、あることに気づいた。烏月さんの傍に必ずある人物が写っているのだ。
・・これなんかは、腕にしがみついてる。思わず胸がズキンと痛んだ。
友だち同士なら、これくらい当たり前。わたしと陽子ちゃんだって、これくらいのじゃれ合いはする。
・・・・・でも。
「・・烏月さん、この人と仲良いんだ?」
なんだかとても気になって、さりげなく聞いてみる。
「ああ、彼女か。仲が良いという程ではないよ。まぁ、他の人よりは話をするほうかな。」
「でも、腕を組んだりしてるし。他にもいっぱい一緒に写ってるのがあるよ?」
「ん・・。まぁ、その、彼女はスキンシップ過剰な面があるから。誰に対しても、そうしているよ。」
なんとなく、烏月さんの様子がおかしい。何かを隠している、そんな感じがする。女の勘が怪しいと告げている。
「・・・烏月さん。何か隠してない?」
「・・・っ!」
わたしのストレートな質問に明らかに驚いた表情をみせつつ、烏月さんは目をそらした。
じーーーーーーーーっ。
疑いの眼差しで見つめ続けていると、烏月さんは根負けしたように話し出した。
「・・・実は、彼女からは以前・・告白されたことがあるんだ。」
「えぇっ!?」
「で、でも、きちんと断っているよ。私には、桂さんがいるからね。」
「・・うぅ、そのわりにはなんだか仲良さそう・・。」
わたしが悲しげにそうつぶやくと烏月さんは珍しく慌てたように言葉を続ける。
「いや、それは、恋人は無理でも、普通の友人として接して欲しいと彼女から言われて・・。本当に、今ではただの友人・・いや、クラスメイトなんだ。」
「そんなの・・、そんなのわからないよっ!」
思わず自分でもびっくりするくらいの大きな声で叫んでいた。
・・ただのクラスメイト、烏月さんにとっては、本当にそうなのだろう。・・・でも。
「烏月さんは、ただの友だちとして見ているかも知れないけど、その人は絶対にまだ烏月さんのことが好きだよ!わかるもんっ!
・・・わたしと会えない間、そんな人が烏月さんの近くにいるなんて・・。そんなの・・っ。」
抑えられない感情を一気に吐き出す。烏月さんは、とても困ったような表情を浮かべ黙り込んでいる。
そんなの当たり前だ。烏月さんは悪くない。私が勝手に嫉妬しているだけなのだから。
烏月さんに背を向けたまま、わたしは先ほどまでのことを思い返す。
落ち着いて考えれば考えるほど、後悔の念が浮かんでくる。どうして、あんな風に言ってしまったんだろう。
あんなことを言って、烏月さんを困らせるつもりはなかったのに。
仲直りをしたい。でも、さっきまでぷりぷり怒っていたのに、いきなり謝るのはなんだか照れくさかった。
どうやって、仲直りをしようかと、布団をかぶって色々考えて見たけど何も思い浮かばない。
このままだと、烏月さんもそのうち寝てしまうだろう。
とりあえず、寝てしまわれないように、わたしは意を決して烏月さんの布団にもぐりこんだ。
「・・っ!け、桂さん?ど、どうしたんだい?」
驚いた表情を浮かべて、烏月さんが見つめてくる。
「そ、その・・。さっきの罰です。・・きゅうきゅうの狭い布団で寝る罰・・。」
思わず口をついて出た言葉は、自分でもあきれるようなものだった。
あまりの子供っぽさに烏月さんもあきれているかと上目遣いで様子を伺うと、優しく微笑んで抱きしめてくれた。
「桂さん・・。本当にすまなかった。でも、私が好きなのは桂さんだけだよ。」
「うん・・・。私も・・。」
「しかし、これでは罰ではなくてご褒美になってしまうね。」
そういって、くすくすと笑う烏月さん。ちょっぴり悔しくなって私は言葉を探す。
「そ、そんなことないもん。罰だも・・あっ・・んんっ。」
キスで口を塞がれる。そのまま、烏月さんの手が胸を優しく撫で回す。
「・・んっ、だめっ・・!罰なんだから、えっちなこと・・ふぁっ・・しちゃだめっ・・!」
わたしがそう言うと烏月さんは、手の動きを一瞬止めたが、すぐにまた優しく撫でてきた。
「あぅ、だ、だめって言ってるのに・・っ!」
「いやらしいことをしなければいいんだろう?これはただ、軽く撫でているだけだよ。・・それに桂さんの敏感な部分には触れていない。」
たしかに、烏月さんは胸の中心には触れず、その周りを撫で回しているだけだった。ただそれだけなのに、わたしの胸の先端は恥ずかしいくらいに硬くなっていた。
「それとも、桂さんはこれくらいのことで、感じてしまうような身体なのかい・・?」
「あっ・・ち、ちが・・んっ・・ぅっ!」
ただ撫でられているだけなのに、気持ちよさに思わず声がでてしまう。胸の先端は先ほどよりも更に硬くしこって、触れて欲しそうにうずうずと主張をしている。
しばらくの間、胸を撫でていた烏月さんの右手が離れたかと思うと、今度は太ももの内側を優しくさすってくる。
もっとも敏感な部分には触れず、その周りを優しく攻め立てる。
「はぅっ!・・もう・・やぁっ・・うづき・・さん・・おねがっ・・!」
「どうしたんだい?ちゃんと言わないとわからないよ・・。」
「・・さ、さわって・・っ。ふぁっ・・!」
「さっきから桂さんの身体を触っているだろう?・・・それとも、もしかして・・。」
烏月さんは、ちょっと意地悪な笑顔を浮かべつつ、耳元で甘く囁いた。
「・・桂さんのいやらしいところをさわって欲しいのかい・・?」
「やぁっ・・んっ。」
じらされたわたしの身体は、烏月さんのそんな意地悪な囁きにすらピクンと反応してしまう。
わたしは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、烏月さんを求める言葉を口にした。
「・・えっ・・ちなところ・・さわって・・くださ・・っ・・ああぁんっっ!」
「・・よくできました。・・ご褒美をあげるよ・・・。」
ひとつの罰とたくさんのご褒美の夜は、まだ始まったばかり。
おわり