ぐぅー…

「うぅ〜…お腹すいたぁ〜…」

わたしは空腹に耐えかねて家の中をさまよっていた。

「何か無かったかなぁ…」

食べる物を探しにキッチンへ行く。

そこには柚明お姉ちゃんがいた。

夕食で使うのだろうか、にんじんの皮を剥いていた。





「あら、桂ちゃん、どうしたの?」

「うん、ちょっとお腹すいちゃって。」

柚明お姉ちゃんの隣に座る。

「ねえ、何か食べる物無い?」

「そうね…りんごが一つあったわ。」

冷蔵庫からりんごを取り出してくれた。

「あ…皮は自分で剥くよ。」

「桂ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫だよ、うりゃっ!」

急いでりんごの皮を剥く。

じょり…じょり…じょり……

「桂ちゃん、そんなに急いだらあぶないわ。」

「平気平気。」

じょり…じょり…ざしゅっ……

「痛っ!うぅ〜指切った〜。」




「だ…大丈夫?見せて桂ちゃん。」

「うん…」

左手の人差し指に小さな傷。

少し出血しているが大した怪我ではない。

「…これなら大丈夫ね。」

「そうだね、これくらいなら舐めておけば大丈夫だよ。」

「ふふっ、経見塚での事を思い出すわね。」

「あの時はわたしが自分でやったんだっけ、それでお姉ちゃんに…」

「えぇ、あの時は嬉しかったわ。」

経見塚のことを思い出す。

双子に襲われたこと、崖から落ちたこと、背中をふいてもらったこと、

鼻血を出したこと、蛍を見たこと、そして主の憑いた白花お兄ちゃんとの戦い。





「ねぇ、お姉ちゃん。」

「なぁに?」

「わたしの血を…傷を舐めて。」

「あら、わたしはもうオハシラサマじゃないのよ。」

「わかってる、けど、お姉ちゃんに舐めてもらうと早く治る気がして…」

「ふぅ…桂ちゃんは甘えんぼね、…いいわ、指を出して。」

言われたとおりに指を差し出した。

柚明お姉ちゃんの唇がわたしの指に近づく。そして…




「はむっ……ん…」

わたしの指が柚明お姉ちゃんの口に入る。

柚明お姉ちゃんの口の中は暖かくて、優しい感じがした。

本当に傷なんてすぐに治ってしまいそうだ。

「ぅ…ん……ぴちゃ…」

柚明お姉ちゃんが舌の先で傷口をなぞる。

顔を赤らめながら、わたしの指に付いた血を舐め取る。

(…それにしても……)

舌のざらざらした感覚、上気した頬、時折混ざる水音。

「ううっ…何だかえっちだよぅ……」

「……だったら、もっとエッチなこと…しましょうか。」

「えっ、お…お姉ちゃん?」





わたしの声を無視したお姉ちゃんは、右手でわたしの左手を掴む。

わたしの左手の甲にキスをして、人差し指と中指の間に舌を入れチロチロと動かす。

そのまま中指の先にむかって、つうっと舐め上げる。

中指と人差し指を一緒に咥え、甘噛みする。

「……ぁむ…ちゅぷ…ちゅ……」

わざと大きい音を立てて、わたしの指に吸い付く。

お姉ちゃんが指を根元まで咥え、舌を絡め、これでもかと言うくらい吸い上げる。

その行為に、わたしの中で理性の糸が切れそうになる。




「ふっ……はぅ…ん……んんっ!」

柚明お姉ちゃんの息が荒くなる。

何かと思ってお姉ちゃんを見ると…

「お…お姉ちゃん……なにを…」

柚明お姉ちゃんは自分の秘所に手を這わせ、自分自身を刺激していた。

「はぶっ…んっ!ぁふ……んぅぅ…ふあぁっ!」

わたしの視線に気づいたのか、柚明お姉ちゃんの舌の動きが激しくなる。

自分を刺激する指の動きも…

「あぁ……お姉ちゃん…」

潤んだ瞳でわたしを見つめる柚明お姉ちゃん。

その淫靡な表情に…わたしはもう耐えられなかった。




右手で自分の秘所に触れる。

そこはすでにびしょびしょになっていた。

「ぁ……すごい……」

パンツの中に指を入れ、秘所を直接刺激する。

お腹の虫はすっかりなりを潜め、かわりに妖しい感覚がわたしの中で大きくなる。

「んっ…んぁっ!お姉ちゃん…お姉ちゃん!」

「んんっ!ん…ふっ……っん!」

絶頂が近づくにつれ、自分を慰める指の動きが激しくなる。

柚明お姉ちゃんも限界が近いのか、わたしの指を噛み、快感に耐える。

「あっ!あぁっ!イっ…ちゃう……ゆめ…お姉ちゃん…もう…イくっ!」

二人とも…もう限界だった。

「あああぁぁぁぁっ!!」

「んぅぅぅぅぅっ!!」




「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……」

テーブルに突っ伏して息を調える。

柚明お姉ちゃんも、四肢を投げ出し、椅子にもたれてぐったりしている。

「………」

自分の両手を見つめる。

柚明お姉ちゃんの口内を犯していた左手と、自分を慰めていた右手。

両手の指を絡ませ、二つの液を混ぜ合わせて、離す。

指の間に引いた糸が、二人の心が繋がっていると言っているようで、嬉しくなる。




「桂ちゃん。」

柚明お姉ちゃんに呼ばれ、そちらを見る。

いつのまにか服をすべて脱いでいた柚明お姉ちゃんが、わたしに抱きつく。

「桂ちゃん……」

「うん……」

わたし達は抱き合い、何度も何度もキスを交わす。

皮むきを途中で放棄されたりんごが目に入ったが気にしない。

今日の夕食の時間は遅くなりそうだ。



                            ―血と指