「桂ちゃん、背中を拭けばきっと気持ちよくなるわ」

そう言ったのは、ユメイさんだった。

わたしはそんな彼女に身を任せ、浴衣をはだけてタオルの冷たさに心地よさを覚える。

「気持ち良いかしら?」

「うん、すごく。 ありがとうユメイさん・・・」

そしてその気持ちよさがずっと続いたためか、

わたしはつい うとうとして・・・  眠りへと堕ちてしまった。


・・・しばらくして、目を覚ます。

「・・・あれ?」

きょろきょろと部屋を見回すと、中にはわたし一人しかいなかった。

「ユメイさん?」

さっきまでそばにいたはずのユメイさんが消えていた。

「おかしいな、さっきまでここに・・・・」

いたはずなのに・・・・・・・。

そこで、ふと不安がよぎる。

「もしかして、ユメイさん・・・・」

《力》を使い果たしてしまった・・・?あの、人の姿を保てなくなったとか・・・・・!?

「・・・ユメイさん!?」

わたしは叫んだ。

―嫌。

もう大事な人がいなくなるのは嫌。わたしの前からいなくならないで。

お願い、ユメイさん・・・・・・!!


「桂ちゃん、どうしたの!?」

不安の雲が広がったわたしの心に光をさし入れてくれたのは、

他の誰でもない  ユメイさんだった。

「ゆ・・・めい・・・さん?」

「どうしたの桂ちゃん、何かあったの?!」

手に持っていた、水の張った桶をその場に置いてユメイさんはわたしの元へ駆け寄り、

そしてぎゅっと抱きしめた。

―ユメイさんの肌の温もりが伝わってくる。

「・・・あ、ち、ちがうの・・・

 わたし、ユメイさんが消えちゃったんじゃないかって思って・・・

 それで、すごく、不安で・・・・・・・・・」

「そう、だったの・・・   桂ちゃんごめんなさい、

 桶の水を替えるのだったら大した時間はかからないと思っていたのだけれど・・・」

「ユメイさんが謝ることなんかないよ、わたしが変な風に考えちゃったから。

 わたしが、ユメイさんいなくなったなんて考えちゃったから・・・」

すると、ユメイさんは優しい笑みを浮かべてわたしの手をぎゅっと握り、言った。

「桂ちゃん・・・

 私は、ちゃんとここにいるわ」

ユメイさんの手は温かくて、それでいてどこかなつかしかった。

・・・けれど。 この温もりも、なつかしさも―――・・・・・・・


意を決して、わたしは言った。

「ユメイさん」

「なあに、桂ちゃん?」

「わたし、手だけじゃ駄目だよ・・・」

声が震える。涙が滲む。

だけど、わたしの意志は変わらない。

「わたし、ユメイさんがここにいるっていうことを、体全部で感じたい!」

―高ぶる感情を抑えきれずに、叫んでいた。

「桂ちゃん…」

わたしの告白を聞いたユメイさんは、一瞬はっと驚いた表情を見せるけど、

すぐに落ち着きを取り戻して、尋ねた。

「…いいの?」

わたしはその言葉にこくりとうなづく。

それを見たユメイさんは、もう聞くことはせずに。

「分かったわ」

それだけ言って、わたしの着ている浴衣の帯を、ゆっくりと解いていった―・・・・・・


一糸纏わぬ姿となったわたし達は、

その存在を確かめ合うようにお互いの体を触って 抱き合った。

ユメイさんの肌はすごく綺麗で、白くて、そして体も細くて・・・

無理をすれば折れてしまいそうなほどに儚く見えた。

・・・ユメイさんとわたしの唇が触れ、舌をからめる。

「・・・ちゅ・・・・・・・ぱ・・・あむっ・・・・・・・・・」

お互いの出す唾液を交換しあい、それを味わう。

抱き合う力は更に強くなり、全身が火照っていく。

わたしはユメイさんをもっと感じようと、舌を更に伸ばして彼女の唾液をすくい取る。

「はぁむ・・・ゅ・・・・・・ん・・・・ぁふ・・・・・・・・・・・・・・・・ぷは・・・っ」

ようやく唇を離して口に残った唾液を飲み込む。

「ユメイ・・・さん、わたし、まだ・・・足りない・・・よ・・・」

はぁはぁと息をきらせて顔を赤くさせながらも、わたしはまだ満足していなかった。

「桂ちゃん、そうなの・・・・・じゃあ、私が桂ちゃんを満足させてあげるから・・・・・・・・」

するとユメイさんはゆっくりとわたしの胸を揉み始めた。

「っひゃう!」

たまらず甲高い声をあげる。

ユメイさんの手はゆっくりと、いたわるかのように胸を触っていく。

それによってわたしの興奮はどんどんと高められていった。


「あ、ユメイさ・・・・・・・・」

「桂ちゃん、気持ちいいでしょう?」

「う、ん・・・・気持ち、いいけど・・・・・わたし なにか・・・変、だよ・・・・ぉ!」

頭の中が混乱してなかなか上手く言葉を紡ぎだすことが出来ない。

それでも体は正直なもので、ユメイさんがわたしの胸を弄るたびに更なる快感が襲ってくる。

「桂ちゃん・・・・・」

ユメイさんはわたしの片方の胸を手で揉みしだきながら、

もう片方を今度は舌をつかってぺろぺろと舐め始めた。

「ひゃふぁあ!あっは、ひぃ・・・・!」

いきなり襲ってくる快感に耐えることが出来ず、思わず大きくあえいでしまう。

わたしの乳首は更にとがって、それをユメイさんはいとおしそうに口に含んで、舐めた。

「ん・・・・・・ちゅ・・ぺろ・・・はぁ・・・・」

「やっ、ゆ、ゆめいさ・・・・わたし・・・わ たし・・・・・・・・・・・・あはぁああ!!」

ついに快感に耐えられなくなったわたしの体は、

ビクビクと痙攣して、力を失ってしまった。


「桂ちゃん、大丈夫?」

ぐったりとしたわたしを抱き起こして

ユメイさんは心配そうに顔をのぞきこむ。

「だ、大丈夫だよ。」

心臓の音はまだまだ鳴りっぱなしだけど、

呼吸はちょっと落ち着いてきた。

「本当に?」

それでも心配なのか、ユメイさんは再度わたしの体の心配をする。

「そんなに心配しなくても、もう平気だよ〜」

あはは、と笑って答えると。

「それなら・・・・・」

ユメイさんは、再びばっと抱きついて。

「まだ、続けてもいいかしら?」

「え!?」

彼女の言葉を理解するよりも早く、ユメイさんの唇はわたしの口を塞いでいた。


「んむ・・・・!」

いきなりのキスに抵抗出来るような力はわたしには備わっていなくて。

それに、誘い始めたのは自分だったので嫌がる理由なんてどこにもなく。

ただユメイさんに身を任せるような状態になっていた。

しばらく濃厚なキスを続けていると、彼女はそれだけでは足りなくなったのか

自らの唇を離して、わたしの股間をまさぐり始めた。

「・・・・っ、やあ・・・・・!!」

ユメイさんに大切な所をさわられているという羞恥心からか、

わたしの頬は自分でもはっきり分かるほど熱を帯びていた。

きっと顔なんか・・・もう真っ赤だと思う。

「桂ちゃん、かわいい・・・・・・・」

そんなことを言いつつ、ユメイさんの手はわたしの茂みをかきわけて進む。

・・・と、ふいに彼女の手が止まり。

「・・・・・・・・ひゃふう!?」

いきなり、わたしの小さな突起を親指と人差し指でつまんだ。

体に電流が流れたような感覚を覚え、びくんとはねあがる。

触れられた突起はぷっくりと膨れ上がっているようで、

「桂ちゃんの・・・固く膨れてるわ。それに、すごく濡れてる・・・・・」

ユメイさんはくすっと笑いつつ、そこを弄り始めた。

くちゅっくちゅっ、とわたしの下から出るいやらしい音が耳まで届いて来る。

駄目、わたし、このままだと・・・・!


「や、らぁ・・・・らめ・・・・!!」

ろれつの回らない舌で、それでもなんとか指の動きを止めてもらおうと懇願するけど、

それが更に彼女の心をくすぐるらしくて。

より激しくユメイさんの指はわたしを攻めてきた。

「らめ・・・!ゆめい・・・はっ、んん!!わ、わらし・・・・・・・!!」

「駄目じゃないわ、最初に誘ってきたのは桂ちゃんよ?」

「たしはに、そうらけど・・・・・!!」

「なら、大丈夫よね」

大丈夫ってなにを――・・・

そんなことを考えさせる暇さえ与えてくれずに、

ユメイさんはわたしの膣に指を入れて、ちゅくちゅくとかき回し始める。

「・・・・っ!?はぁんっっ!」

突起に触れられた時とはまた違う、やりきれない感覚が襲ってきた。

「桂ちゃん、気持ちいいかしら?」

「はっ、はっ、んん、いい・・・・!!」

「そう、いいのね?」

わたしの言葉(といっても、もう自分でも何を言ってるのか分からないんだけど)を聞いたユメイさんは、

膣の中に入れた指をもっと激しく動かした。

快感の波を止めることの出来なくて、

犬のように口を開けて、わたしはそこから飲み込めない涎を垂らす。

・・・・・・・もう、限界――・・・・・・!!

そして。

「ゆめ・・・・はぅぅ、は、い、いっちゃ、う、いっ、ちゃう・・・ああああぁぁあああぁあ!!!!」

自分の声だとは思えないほど甲高い叫び声をあげて わたしはそこで気を失った。


「う、ん・・・・」

目覚めると、辺りはすでに電気をつけなくてもいいほど明るかった。

屋敷のそばの森から鳥のさえずりが聞こえる。

「朝・・・・・・?」

・・・そっか、わたし、あのまま寝ちゃったんだ・・・・・・

記憶を再生しようとすると、なんだか妙に恥ずかしくて顔を隠したくなる。

まぁ、そんなこと考えてないで・・・

わたしはとりあえず服を着ようと、むくりと起き上がろうとすると・・・・何か違和感を感じた。

・・・・ふと横に目をやる。

と、そこには同じ布団で裸のまますーすーと寝息をたてるユメイさんの姿が。

「ユメイさん!?」

思わず驚いて大声を出してしまう。

すると、わたしの声でユメイさんは目を覚ました。

「ふぁ・・・・・・・・・・・あら、桂ちゃん。おはよう」

「う、うん。おはようユメイさん」

・・・・。

「あの、ユメイさん、昨夜は、その・・・・」

わたしが言葉を上手く紡ぎ出せないでいると、

「昨夜・・・?   ああ・・・・・、桂ちゃん、ごめんなさい」

先にユメイさんが、何故か謝ってきた。


「え?え?? どうしたのユメイさん!?」

「その、昨夜は少しやりすぎてしまったから・・・

 もし桂ちゃんが気を悪くしていたら悪いと思って」

「そ、そんなことないよ! むしろわたし、ユメイさんにお礼言いたくて!」

わたわたと両手を振って応えると、彼女ははてな顔をした。

そんなユメイさんに、わたしは顔をぽっと染めながらお礼を言う。

「昨夜・・・ずっと一緒にいてくれて、ありがとう。」

「桂ちゃん・・・」

「わたし嬉しかった。この肌で、この体全部でユメイさんを感じることができて・・・。

 だから、ありがとう。」

お礼を言うのはちょっと恥ずかしいと思っていたけど、

言ってしまえば胸の中のつかえは取れてしまうもので。

わたしの気分は雲ひとつない青空のようにすっきりしていた。

えへへ、と笑顔を見せるわたしにユメイさんは、

「私も、桂ちゃんと一緒にいられて良かったわ。

 こちらこそ・・・ありがとう」

と、ぺこりとおじぎをした。


「桂、ユメイ!いつまで寝てるんだい、もう朝だよ!」

遠く・・・この声は台所からだろうか、サクヤさんの声が聞こえる。

「あ、サクヤさんが呼んでる・・・ユメイさん、早く着替えて行こう。」

「そうね、サクヤさんと葛ちゃんだけに準備させるのは悪いものね」

わたし達はいそいそと服を着て、台所へと向かった。


・・・・・・・。

「ねえ、ユメイさん?」

「なあに?」

「わたし達、ずっと一緒にいれたらいいね」

「・・・・・・・そうね、ずっと一緒に・・・・・・・」


「「最後まで、一緒に・・・・・・」」