「烏月さん、今日は私が晩御飯をご馳走するね!」

「………は?」

桂さんのその一言が全ての始まりだった…。


今私がいるのは桂さんの住んでいるアパート。

経観塚での一件の後、強い絆で結ばれた(顔真っ赤)私は度々桂さんのアパートを訪れる様になっていた。

忙しい任務の合間を縫っての訪問。

普段はもう少し遅い時間に来るのだが、今日は夕方頃についてしまった。

だがそれが、強力な鬼との死合い以上の修羅場に繋がるとは予想だにしてい無かった。


「ふん、ふん、ふ〜ん♪」

楽しそうに鼻歌を歌う桂さん。

だがその手元で調理されている物体は私が知る限り、見た事の無い物だ。

つーか有りえない色してるんですけど…

「烏月さん、もう少しで出来るから待っててね」

「いや、出来るなら、永遠に完成して欲しく無いんだが…」

そう反論するも桂さんは、まるで聞いていない。

これはマズイ、本気でヤバイ。

私が今まで培ってきた、生存本能が警鐘を鳴らしている。

(この料理を食ったら逝くぞ!!)

確信ともいえる心の叫びが聞こえる。

「け、桂さん!」

私は思わず声を掛ける。



「ん、どうしたの?烏月さん」

のほほんとした声を上げる桂さん。

私はなるべく刺激しない様、慎重に近寄る。

「私が食べたいのは、桂さんの料理じゃ無いんだ…」

「えっ、そうなの?」

桂さんは少し悲しそうな顔をする。

「すまない、私が食べたいのは、桂さん本人なんだ…」

「えぇっ!それって……」

「桂さん…好きだよ…愛している……」

私の唇が桂さんの唇に重なる。

「うっ…うぅ…むぅ……」

長い時間をかけてお互いの舌を絡ませる。

「ぷはぁっ、はぁ、はぁ……烏月さぁん…」

桂さんの目が熱っぽく私を見つめた。

(作戦成功!このまま押し切る!)

こうして私の妥協なき「桂さんすまない、料理だけは勘弁してくれ作戦」がスタートした。



再び桂さんの唇に触れる。

今度はついばむ様な優しいキス。

それを繰り返しながら、手早く桂さんの服を脱がしていく。

「あんっ…恥ずかしいよ、烏月さん…」

「大丈夫だよ桂さん、とても綺麗だ……」

事実、桂さんの体は美しい。

肌などはガラスの様に透き通っていて、触れれば壊れてしまいそうだ。

私はその肌を傷つけ無いように優しく撫でる。

「ふぁ……あぁ……」

まだ小振りながらも形の良い胸に手を這わせ、ゆっくりと揉みしだく。

上を向いてきた乳首も、指で擦る様に愛撫する。

「…あっ…はぁ…気持ち…いいよう……」

「ふふっ、桂さん。下の方が寂しそうだね」

そう言って私は桂さんの背後に回り、片手を胸に、もう一方を股間に伸ばす。

割れ目の方はすでに濡れており、私の指を簡単に受け入れる。

「んぁっ……うぅ…あっ…あっ…あぅぅ…」

桂さんの喘ぎ声が激しさを増す。

これでも今まで幾度か肌を重ねてきた仲だ(最初に誘ってきたのは桂さんだった)。

どこが弱いかは大体把握している。

「桂さん…ここがいいんだろう?」

指を折り曲げて割れ目の上を責める。

「あはぁっ!…烏月さんっ、そこはっ…あぅ……くふぅ……」

一際大きな声が上がり、割れ目から愛液が溢れだす。

桂さんはもう立っていられない様で、へなへなと床に座り込んでしまった。



「桂さん、私のも触ってくれないか?」

荒い息をつく桂さんの手を取り、自らの下着の中に導く。

「うん…、わっ…烏月さんのここも凄い濡れてる……」

「桂さんが、あまりにも可愛くてね」

私も桂さんの割れ目に再び手を伸ばす。

「一緒に……いこう……」

互いに指を動かしながら、唇を合わせる。

快楽が伝わりあい、指の動きが激しくなる。

「んっ…あっ…むぅ…ぷはぁ……う、烏月さぁん…」

「くっ…ん…はぁ……はぁ…桂…さん……」

何度も舌を絡めあい、唇をむさぼる。

愛しさがこみ上げ、空いている手で桂さんの頭を抱き寄せる。

うなじを流れる髪をかきわけ、露出した耳を優しく噛む。

「あぅっ…はぁ…あっ…んっ…あっ…烏月さんっ…私…もうっ…」

「ああ…桂さん…一緒に…一緒…に…はぅっ…」

頭を電流が駆け抜けた。

「烏月さああああぁぁぁん!!」

「くうぅっ、ああぁぁぁぁ!!」

二人の声が重なり、抱き合ったまま床に寝転がる。

互いに呼吸を整えようと、大きく深呼吸を繰り返す。

「はぁ…はぁ…はぁ…烏月さん…大好き…」

「私もだよ…桂さん…あなたを…愛している…」

桂さんを抱く手に力をこめて、私はそのまま快楽の余韻に身を任せた。



「それじゃあ桂さん、今日はもう帰るよ」

あの後、交代でシャワーを浴び、暫く休んでから私は桂さんに声を掛けた。

「えっ、もう帰っちゃうの。烏月さん泊まっていけばいいのに…」

「流石にそうはいかないよ、いつ鬼切り部から連絡があるか分らない。それにサクヤさんと

 鉢合わせでもしたら大変だ」

「そ、それはそうだね。じゃあ残念だけど…また来てね、烏月さん」

少し寂しそうな顔の桂さんに心が揺らぐ、が仕方無い。

「ああ、必ず」

しっかりと返事を返し、玄関に向かう。

向かおうとしたのだが、私の背に桂さんの声が掛かる。



「あっ、待って烏月さん!」

振り返ると、なにやら大きいタッパを持った桂さんがこっちに駆け寄ってくる。

「なんだい?桂さん」

なぜか嫌な予感をヒシヒシと感じつつ、問いかける。

「なんだかんだで烏月さん、晩御飯食べ損ねちゃったでしょ?だからさっき作ってたの

 これに詰めておいたから、お夜食にでも食べて♪」

恐ろしい台詞と満面の笑みでタッパを差し出す桂さん。

「い、いつの間に…」

「烏月さんがシャワー浴びてる時だけど、どうしたの?」

不思議そうな顔で聞き返しくる桂さん。

これを断る勇気を、私は持ち合わせていない。

かといって桂さんが一生懸命に作った料理を食べずに捨てるなど、もっての他だ。


(兄さん、もうすぐ会いに逝くかもしれません。不出来な妹をお許し下さい)


タッパと維斗を持ち…夜風に吹かれながら…私は家路についた。



END「運命とタッパと維斗」