379 :アカイイド1:2008/01/10(木) 23:52:30 ID:uRmhJzHk

 月明かりだけが井戸の二人を照らしていた。

「・・・・・・」

 葛は桂に自分の苦しみを吐き出し、桂はその苦しみを払拭した後、二人は寄り添い

井戸の中は暖かい。

「このままずっといるというのも悪くはないかもしれませんね」

 そう言った葛は桂の腕に抱きつき、顔を埋めた。

「それはちょっとキツイかも」

「はは、冗談ですよー。でも、桂おねーさんと一緒ならそれも悪くないかなーって」

「それって、告白?」

 葛は、はははと笑い、桂の頬に口付けをする。

「そうですよ。結婚しましょう、桂おねーさん!」


「くんくん・・・贄の血の匂いがするわ」

 ノゾミが鼻息をスンスン言わせて進む。

「姉様、格好悪いので気配がする、と言う事にしませんか?」

 とミカゲ。

「ま、そうね」

 言って立ち止まり、二人は辺りを見渡す。

「間違い無く、近くに居るわ。隠れてるのかしら?」

 ノゾミが木々の陰を覗き込むが何も見つからない。

「姉様、隠れているとしたら此処しかないかと」

 ミカゲが指差したのは暗闇に同調する、まるで落とし穴の

ような井戸だった。

「あ、あははははは!!真坂こんな汚い井戸にいるわけ無いじゃない。

物語でもあるまいし・・・でも、」

 笑っていたノゾミだったが木々の途切れたこの場に隠れる場所は

ここしか無かった。

 無かったのだが。

(こんな汚らしい場所を調べるのは嫌よ)

 と、ノゾミは思った。


380 :アカイイド2:2008/01/10(木) 23:53:52 ID:uRmhJzHk

「でも、念の為、念の為だから!ミカゲ、調べて来なさい!」

「・・・・・・」

 沈黙。

「ミカゲ、早く行きなさいよ!!」

「・・・えー」

「ミカゲ!!」

「こうやって命令口調の時だけは妙に得意気になって私に命令して

少しは自分でやれないの?と言いたいけど、もしそんなことを言ったら

ひょっとしたら泣いてしまうかも知れないし、ほら、姉様意外と世間ず

れしてないし、厄介なんだよね。まぁそこが可愛いんだけど。

現実問題、可愛いだけでは食べていけないし、使えない子とは常に思って

いて、頭にくる時もあるんだけど、比較するのが私って言うのがね。

ほら、私の方が有能だし、可愛いし」

 と早口で言った。

「わー、ミカゲ今日はお喋りね」

「いえ、そんな事は」

「井戸の中を調べて来て」

「どうしても?」

 睨んで無言で行けと答える。

「・・・・・・」

 ミカゲがノゾミを見詰めたまま沈黙。

「・・・・・・・・・・・・・・・いませんでした」

「見え見えの嘘をつかないで!」

 頬を引っ張り合って喧嘩をしていると人の気配と足音がして、二人は

同時に振り向き、美しい黒髪の少女がそこにいた。千羽烏月である。

「葛様の甘酸っぱい香りを辿って見れば、人違い所か鬼だったとは。

ちっ、一刻も早く葛様に、短パンを穿いている時、女の子はパンツが見えないと

安心しはしゃぎ回り、大胆な動きにも抵抗が無くなるが、その実短パンもパンツが

裾からチラリと見え、スカートのそれと比べると極めて卑猥であると警告しようと思った

のだが・・・」

「こ、こいつ変態!!」

「いえ、姉様。鬼切りです」

「とは言え、邂逅とは僥倖だ。覚悟しろ!」

 烏月が鞘から維斗の太刀を抜くと、素早く肉薄し、二人に切り掛かる。

「オン・マカ・シリエイ・ジリペイ・ソワカッ!」

 袈裟に通る月光は空だけを切り裂いた。

「くっ!」

 突然の攻撃に、二人は防御も間に合わず避けるのが精一杯だった。

 刀身より少し離れた間合いを烏月は破軍の型を取り、じりじりと距離を

詰める。刀身が届けば、素早く振ることに長けた破軍の型に軍配が上がる自身が

烏月にはあった。


381 :アカイイド3:2008/01/10(木) 23:55:05 ID:uRmhJzHk

 素早く詰める事も可能だが、それではさっきの二の舞を演じる事となるだろう

と思い、日時計の様な速度で詰め寄る。

 鬼が術を仕掛けた時が勝負、その時こそ、この脚力が爆ぜる時である。

「待って下さい」

 と、ミカゲ。

「・・・・・・」

 待てと言われて待つはずが無く、型を解く事も無かった。

(何かの術でも掛ける気か?)

 そう思った烏月だが、その気配も無い。

「貴女も人を探しているようで、どうです?一時休戦し、一緒に探すと

いうのは」

「そ、そうよ協力しなさい!鬼だって争う事だけが脳じゃないわ。

弱い人間に肩を貸してあげるんだから、有難いと思いなさい?」

 ミカゲに釣られてノゾミも言う。

「・・・・・・・・・いいだろう」

 維斗を鞘に戻しはしたが、太刀の如く鋭い目は心に納める事は無かった。

「交渉成立ね」

 ノゾミは烏月に手を差し出した。

「これは?」

「こ、これから協力する仲なんだから握手位してあげようと思って。

べ、別に深い意味は無いわよ」

 烏月はその手をただ見詰めるだけだった。

「勘違いするな。貴様らとは協力関係では無く、利用し合う関係なだけだ。

親愛の証の握手など、遠過ぎる」

「ま、それもそうね」

 少し残念そうな顔をしたノゾミもこればかりは仕方が無いと諦めた。

「よろしく。私の名前は千羽烏月」

「私はミカゲ」

 お互いに握手をする烏月とミカゲ。

「そうか、鬼の手も暖かいのだな」

「鬼も色々ですから。貴女の手も柔らかい」

「いや、刀を持つので掌はボロボロだが・・・御世辞でも嬉しいよ」

「御世辞では無いです」

 お互いに見詰め合いながら二人の話は弾む。

「悔しくなんか、ないんだから・・・」


382 :アカイイド4:2008/01/10(木) 23:59:56 ID:uRmhJzHk

「この井戸の中に居る?真坂、こんな汚い井戸の中に人が居るわけ

無いだろう。小説じゃああるまいし」

「それに葛様は博識で頭脳明晰、こんな井戸に落ちる訳が無い。

万が一落ちたとしたら、葛様の博識のイメージが壊れてしまう」

<烏月による、葛の博識イメージ>

『薔薇の棘にも花言葉があって、不幸中の幸いでした、なんですよー』

『シャーロック・ホームズはコカインの愛用者だったんですよー』

『キンギョソウの花言葉は、推測で言えばNOです、なんですよー』

『納豆にワサビをかけて食べると美味しいですよー』

『バナナとマヨネーズの食べ合わせは美味しいですよー』


「だからここにはいない」

「それは証明にはならないわ。そう思うんなら井戸の中を探しなさいよ」

「はっきりと言えば、こんな汚い井戸の中を探すのは御免だ」

「いそうな場所がここしか無いのよ!」

「なら、貴様が調べればいいだろう」

「私も嫌よ!」

「なら、じゃんけんで決めればいいじゃないですか、姉様」

 言争う二人にミカゲが割って入る。

「嫌よ!それじゃあ確実には勝てないじゃない!!」

「私は別に構わない。それとも、人間如きに勝てないのか?」

「莫迦にしないで!わ、私の豪運にかか、掛かれば貴女なんて

一撃よぉ!!」

「や、やってやるわよ!」

 ノゾミが拳を引く。

「そうか。では、いくぞ」

「姉様単純・・・」

「最初はグー!」

「じゃんけんって、えー!な、何、最初はグーって?」

 ノゾミが慌ててグーを出す。

「じゃんけん、ポン!」

 二人はほぼ同時に出した。

「・・・それは、ビーム?」

 ノゾミの手は人差し指を前に突き出し、親指を斜め前に突き出した

状態だった。子ども達がごっこ遊びで拳銃を使うジェスチャーをする時に

よく用いられるものと酷似していた。

「ちょ、チョキよ!貴女の方こそ何よ、二本貫手?」

「チョキだ」

「ま、まぁいいわ!アイコで、」

「「しょ!」」

 ノゾミは古流チョキをまたしても出し、烏月はそれを読んで

グーを出していた。烏月の勝利である。

「これで文句は無いだろう。早く探してくれ」

「不公平よ!」

 ミカゲと烏月があまりにも身勝手な言葉で振り向いた。


383 :アカイイド5:2008/01/11(金) 00:02:00 ID:uRmhJzHk

「こ、この世には、じゃんけんで常に勝ち続ける、じゃんけんに愛された子がいるかも

知れないじゃない。そう、不公平よ!やり直しよ!!」

「姉様、その言い訳は流石に、」

「成る程、一理ある。なら、何で決める?」

 と、烏月。

「えー・・・」

 バカだこの人、とミカゲは思った。

「そうね・・・なら、どっちが可愛いか勝負よ!!」

「いいだろう!」

「そっちの方が不公平では・・・」

 ミカゲの言葉を無視して、二人はミカゲの前に横に並んだ。

「さあミカゲ、どっちが可愛いかはっきり言って、」

「烏月」

「・・・え?」

 ノゾミはミカゲなら自分を選ぶに違い無いと自分に有利な勝負を仕掛けた

のだが。あまりにも意外な言葉に、驚く事しかできなかった。

「な、なんでよミカゲ!いつも私の事を可愛がってくれたじゃない!」

「もう、小さい胸には飽きました」

 はっきりと、これ以上無い位はっきりと言った。

「そんな、うわあああんっ!!!」

 ノゾミは膝を落とし、大粒の涙を流した。ミカゲが烏月に振り向く。

「泣かしたー」

「いや、選んだのは貴女だ」

「貴女の魅力が私をそうさせたのよ」

「え・・・」

 烏月はどきっとしてミカゲを見詰め、静寂が流れた。

「こんな事で誤魔化せられるか!」

「ちっ」

「今、舌打ちしただろ?」

舌打ちをするミカゲはノゾミに近づく。

「せめて姉様を励ますのを手伝って下さい」

「無視か?」

 言って、ミカゲは泣いて俯いているノゾミの顔を顎から持ち上げ

その唇を奪った。

「ミカ・・・んっ、はむっ、ぺちゃ・・・」

 互いの唇を啄むように味わい、ノゾミの着物をはだけさせ胸を絞るように

優しく揉み、その先端を刺激する。

「なはーーー!」

 変な声で烏月は驚いた。励ますってこういう事かよー、とか色々思った。

「あんっ・・・」

 ノゾミの幼い喘ぎ声に、烏月の奥が刺激され、口内が唾液で侵食される。

 さっきのミカゲの言葉をすんなりと受け入れる心が刹那完成。いや、この場合は

理性の崩壊と言うのかも知れない。

 烏月は慣れない手付きでノゾミの涙を嘗め採る。

「ちょっと・・・」

 顔を嘗められる恥ずかしさとくすぐったさが混ざった響きに

嫌悪の感は無かった。

「姉様、私を見て」

 再び重ねられる唇。涙のしょっぱさを味わった烏月は耳を甘噛みし、

耳の穴に舌を優しく捻じ込む。

「ン・・・はぁ。ねぇ・・・そろそろ、こっちも弄ってよ」

 ノゾミは太股をもじもじさせ、股間を刺激し、二人に膣の愛撫を

せがむ。


384 :アカイイド6:2008/01/11(金) 00:03:24 ID:Mp4Y5W5p

 その願望を無視し、烏月とミカゲはノゾミの右手を取り、ミカゲは親指を、烏月

は小指を口に含み愛撫した。

「あ・・・くすぐったい」

 最初はくすぐったかったそれも、快楽に解れた体には蕩けるような感覚だった。

手の甲はまだ良かったが掌が駄目だった。懸命に嘗める姿を俯瞰するこれは

口付けより卑猥で、ひょっとしたら気持ち良いかも知れない。

 掌の、特に間接の部分が絶頂にはいかないものの、飛びそうだった。

「あむ、ちゅぱっ・・・」

「ぴちゃ、姉様・・・元気になりましたか?」

「うん・・・」

 二人はノゾミの中指を丹念に嘗め回しながらお互いの舌も絡め合わせて、そちら

はそちらで楽しんでいた。

 指から舌が離れる。快感に酔った目で唾液でベトベトになった指を見詰めていた。

「あ・・・」

 ノゾミはその唾液に濡れた指を膣に乱暴に入れた。

「あぁっ!ん・・・」

 散々焦らされた行為の反動か、ノゾミは愛撫された指を使い

快楽を貪る。指が愛された分だけ、つよくつよく。

「はぁはぁはぁはぁ・・・」

 ミカゲと烏月は首筋を嘗め、なおノゾミを楽しんでいる。

 愛されるだけ、自分を、自分の快楽を引き出し、そして、

「ん!ああっ・・・!」

 一部から全体へと、愛は流れた。


 話が全く変わって。

「わーい、葛ちゃんと結婚だー!」

「あははは。新婚旅行はどこにしましょうか?」

「葛ちゃんが一緒なら、どこでもいいよー」

「そんなー桂おねーさん。もうWAKASUGIなりなんなり

利用してやりますよぅ!

 新しい法律をつくって同性も結婚できるようにしますよー!」

「葛ちゃん、やりたいほーだいだー!」

 桂と葛はとっくに井戸から出ていたりする。

おわり