128 :『太陽の表面温度、六千三十七度六分』 :2007/06/13(水) 00:01:59 ID:8jO1o4Rj
「三十七度、六分……。微熱というにはちょっと高いくらいですわね」
さっきまであたしがくわえてた体温計を手に、お凛がそう言った。
ここ、保健室に今いるのはベッドに寝てるあたしと、その横に佇むお凛だけ。
授業中に体調不良を覚えたところ、このお節介なお嬢に付き添われたあげく、保健室は先生が留守してたという状況だ。
「まったく、夏風邪はバカがひくものですわよ?」
呆れたように呟くお凛に、あたしは保健室のベッドで横になったまま、抗議の声をあげる。
「はとちゃんをバカにするな〜っ」
「……いえ、良いですけれど。確かに羽藤さんも、昨日から風邪で休みでしたわね。……伝染されました?」
お凛の最後の付け加え。心当たりがないではない。
「一昨日の家庭科実習、かなあ?」
熱っぽい額に手の甲を当て、ボソリと呟いた。
「ふむ。一昨日なら、発症してないだけで、すでに羽藤さんの体内にはウィルスが蔓延していたかも知れません。それは災難でしたわね」
「い〜の。はとちゃんから伝染されるなら、インフルエンザだろうがHIVだろうが幸せってもんよっ」
「難儀な性癖ですこと……。そもそもHIVとは、どうやって伝染させられるつもりなのやら」
「それはもちろん、はとちゃんとの愛溢れるチュ〜、とか?」
「HIVは、チュ〜、では伝染りません。そういう不見識はHIV感染者への差別に繋がりますわよ?」
「……あ〜、もううるさいお凛。一応あたしは病人なんだから、余計な議論で熱あげさせないでよね」
頭痛の走る額を押さえながら、呻くように返す。普段ならお凛とのこういうやりとりも上等だけど、さすがに熱ある時には頂けない。
だって言うのに、
「あら、失礼致しました。奈良さんがあまりに元気そうなので、ついつい病人だと失念していましたわ」
なんてことを、ベッドに横になって苦しんでるあたし相手にいけしゃあしゃあとのたまってくれましたよ、この腹黒お嬢は。
さすがにかなりむかっ腹が立った。こうなったらもう、トコトンまでやってやろうじゃないのっ。
「チュ〜、で伝染らないなら、もっと確実に伝染ることをするまでよっ」
「ですからそれは、具体的にどういう行為のことを指しますのかしら?」
いつもと同じ、こちらをからかうようなお凛の微笑が、熱のせいだろうか、今は妙に癇に障った。
「具体的にっつったら――」
あたしはベッドから半ば身体を起こしつつ、お凛の腕を掴む。
「――こういうことよっ」
そのまま同じベッドに引きずり倒すように、その腕を引いた。
「……え? ちょ、奈良さん……っ?」
半端な抵抗をするお凛に、こちらもそれ以上の力で返してその身体を強引に押さえ込む。
気がつくと、ベッドの上で仰向けのお凛の上に、あたしがのしかかってる体勢になっていた。
129 :『太陽の表面温度、六千三十七度六分』 :2007/06/13(水) 00:03:38 ID:8jO1o4Rj
「あ、あの、奈良さん……?」
すぐ真下に、怯える小動物のように気弱げな目線でこちらを見上げるお凛の顔があった。
「…………」
初めて見るお凛の表情に、あたしの中で何かがウズウズと蠢いた。
――勝てるっ!
眼下のお嬢にコケにされてきた回数は数知れず。これまで何をやってもノラリクラリとかわされてきた相手に対し、自分が初めての絶対的優位に立ってる現状だけを理解する。
なんとなく頭が熱っぽく浮かされた感じがした。
風邪のせいか思考は細かくはまとまらないけど、とにかくこの千載一遇のチャンスを逃してはいけないと、あたしの野生の勘が告げてる。告げてるったら、告げてる。
「ふっふっふ……。お〜り〜ん〜?」
わざと不安を煽るように、名前を呼びかける。
「な、何ですの……?」
面白いほどうろたえた様子を眼下に晒すお凛。怯えているのか小刻みに震え、仰向けになってもその膨らみを主張するバストをかすかに揺らした。
「……て、相変わらず腹立つぐらい立派な胸よね〜」
何気なく、両手を大きく広げてその双丘を、ぐわしっ、と掴む。
「ひゃああっ!?」
それに反応して、お凛が絹を裂くような叫びをあげた。
……あ、なんか凄く楽しい。
「ん〜? どうしたのお凛、変な声あげちゃって?」
「そ、それはだって……、奈良さんが、わたくしの……っ」
「あたしが、お凛の、なに〜?」
そらっとぼけて、そのまま気の向くままに柔らかい膨らみを変形させていく。
「あふっ、んん……っ! 奈良さんが、わたくしの、その、乳房を、揉んで……っ」
「そうね〜。あたしがお凛のおっぱい揉んで……。…………?」
おんや? そもそも何だってあたしは、お凛のおっぱいなんて揉んでるんですか? はとちゃんのならいざ知らず。
あ〜、ダメだ。熱で頭がボ〜として、物事が深く考えられない。
んん〜、もういいや。揉み心地がいいのは確かだし、このまま続けちゃおう。
130 :『太陽の表面温度、六千三十七度六分』 :2007/06/13(水) 00:04:46 ID:8jO1o4Rj
「で、ですから、その……っ」
「うん。折角だし、お凛のおっぱい、揉むだけじゃなくて舐めちゃいたいな」
「……は?」
思いつくまま口にした言葉に、お凛が呆然とした表情を見せる。
けどまあ、気にしない。思いついたら即実行が、あたし奈良陽子のモットーだし。
「ちょっ、ちょっ、ちょっ……! 奈良さん、それだけは……っ!」
なにやらわめいているお凛を無視し、片手で胸を揉むのは続けながら、もう片手を使ってその制服の上着を脱がせていく。
ほどなく、お凛の上半身を覆うのは、レースのブラだけになった。色は着けてる人間の内面を表してか黒く、その肌の白さをよく際立たせてる。
て言うか、何ですかこの色気ムンムンな下着は。これはもうきっと、何か色々校則に違反してるに違いない。うん、あたしが決めた、そう決めた。
「という訳で、ぼっしゅ〜」
「な、何が、という訳でで……っ、あっ、やぁ……っ」
ブラを剥ぎ取ってそのバストを露にさせると、お凛は恥ずかしさでか、両手で顔を覆った。それでも隠し切れない部分が赤く染まってるのが、何と言うか、いじらしい。
てか、仮にも女子高付き合い。バスト自体は見せ合った事もないでもないのに、今さらそんな恥ずかしがられても……
「――て、おんや? お凛……、これって、ひょっとして乳首、勃ってない?」
「〜〜〜〜!!」
顔を両手で覆ったまま、声は出さずとも、覆い切れない部分が一段と朱に染まる。
「……ひょっとして、あたしに揉まれて、感じちゃってた?」
「……う……」
やっぱり顔は覆ったまま、お凛は小さくコクンと頷いた。
「へぇ……」
あたしも何か頬が赤くなる感覚を覚える。……いや、多分熱のせいだけど、うん。
131 :『太陽の表面温度、六千三十七度六分』 :2007/06/13(水) 00:05:33 ID:8jO1o4Rj
「あたしに弄られて、感じちゃうんだ……、ふぅん……」
なんとなく、右手の人差し指と中指で、ピンと勃ってる胸の先端を軽く摘まむ。
「……んっ、ひゃっ」
お凛が、面白いほど大きく背筋を跳ねさせる反応を見せた。
摘まんだのとは逆の乳首が、目に見えてさらに大きく膨らむ。
「……美味しそう」
熱で理性が回らない脳が導き出した感想は、それだった。
「え……」
「美味しそうだから、食べちゃう」
「ちょ……んあはぁっ!」
勃起した桃色の尖りをパクリとくわえると、お凛が大きく叫んだ。でも気にしない。
「ちゅっ、ぷっ……、レロッ……」
唾液を塗りつけるように、舌先で乳首をコロコロと転がす。
「ん……ほんと、美味しい……」
「あっ、ひっ、はっ……、な、奈良さんんん……っ」
あたしの背中を、何かが撫でるように巻きついてきた。遅れて、お凛に柔らかく抱きつかれている事に気付く。
「ふはぁ……」
胸から口を離すと顔をあげ、その表情を見てみた。あたしの背中に両手が回されてるので、お凛の顔を隠すものはもう何もない。
お凛の方も、潤んだ瞳でこちらを見つめてきている。真っ赤に染まった顔に、乱れた髪。
本当に何だろう。あのお凛が、物凄く可愛く見えてしまう。
その半開きの唇は紅く、乳首に負けず劣らず美味しそうで――
「お凛……」
「んふぁ……っ、奈良……さん……っ」
あたしが知らず唇を寄せると、お凛の方からも貪りつくように重ねられ――
互いの唇の間で、二人の舌が熱く絡み合った――
132 :『太陽の表面温度、六千三十七度六分』 :2007/06/13(水) 00:06:22 ID:8jO1o4Rj
「――――っ!」
そこで目が覚めて、わたしは勢い良く布団から上半身を起こした。
「ど、どうしたの桂ちゃん? 夢見が悪かった?」
わたしを看病してくれていたのか、隣で柚明お姉ちゃんが心配そうに声をかけてくる。
「え……? ……い、いやははは、何でもないっ、何でもないよっ」
数瞬の間を置いてようやく、先刻まで見ていたのが夢だったんだと気付いて、誤魔化すように笑って返した。
そうそう。わたし羽藤桂は、今日は夏風邪で学校を休んでたんでした。だから今のはただの夢。
「…………」
いや経観塚では、贄の血を吸われた相手と意識だか夢だかを共有した経験があるけど。
そういえば一昨日の家庭科実習で、包丁で切った指から出た血を陽子ちゃんに吸われたような記憶もあるけど。
陽子ちゃんとお凛さんがそんな――なんて、ある訳ないよねっ、あははははっ。
うんうん、ただの夢、ただの夢。
わたしが一人繰り返し頷いてると、
「そう、なら良いんだけど……、寝てる間の桂ちゃんの寝言、苦しそうだったから……」
言って、何故か赤らんだ頬に手を添えて目線を逸らす柚明お姉ちゃん。
……わたし、どんな寝言を口走ってたんだろうか……。
翌日――
「あ、陽子ちゃん、お凛さーん!」
通学路で先を行く親友二人の姿を発見したわたしは小走りに駆け寄った。
「あら羽藤さん、もう風邪はよろしいんですか?」
「うんもう大丈夫」
「おはよーはとちゃん」
「うん。おはよう陽子ちゃん」
そして朝の挨拶を一通り終え、並んで歩き出し――
あれ、なんか歩きにくい?
状況を改めて確認してみると、陽子ちゃん、お凛さん、わたし、で横一列に並んで歩いてる状態。いつもなら、三人揃えば背の高いお凛さんは一歩下がった所から付いてくるのが定位置だったんだけど。
て言うか、良く見るとお凛さん、陽子ちゃんと腕を組んでませんか?
「……あの、二人とも。昨日何かあったの?」
「へ? ……いいいい、いや、何もある訳ないでしょはとちゃんっ? あたしとお凛の間で一体ナニがあるって言うのっ」
「ええ、奈良さんのおっしゃる通り。別段羽藤さんに報告するほどの事は何もありませんでしたわよ。ふふふふっ」
妙に慌てた様子で腕を振る陽子ちゃんに、いつも以上に上機嫌そうな微笑みを見せてくるお凛さん。
そんな二人の様子に、わたしは――
(うん、あんなのは夢。きっとただの夢だってば)
繰り返し、心の中で自分に言い聞かせていた。
『太陽の表面温度、六千三十七度六分』 ED