107 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 19:53:11 ID:mnk0Nf3/

「……奈良、さん?」

「……」

「一体、これは、どういう……つもりなんでしょうか?」

 目の前には、私のお友達がいた。

 学校の、体育館倉庫。

 マットの上に私がいて、私の上に彼女がいた。

 ――なんでこんな事になったのか、さっぱり覚えていない。

 思い出そうとはするのだが、現在の状況が考える事を停止させてしまう。

 あぁ……始まりは何でしたか。

 考える。

 が、すぐに。

 ……目の前にある顔が、思考停止させた。

「お凛」

 名前を呼ばれた。

 びくんと身体が震える。

 目をそらしたくても赤の瞳はそれを許してくれない。

 身動きをとりたくても私の前の彼女がそれを許してはくれない。

 普段ならば気丈に振舞ってつっぱねてしまえるのに、だけど、何だかこの空気が、雰囲気が、そうする事が出来なくさせてしまっている。

 

「何かしら、奈良陽子さん。これは……何の悪ふざけですの?」

 出来るだけ気丈に、……言った途端。

 唇が、ふさがれた。

 軽く触れて離れるキスではない。

 ねちっこく。

 唾液と唾液が絡まりあって、お互いを深く感じる。感じさせてしまう、キス。

 突然の出来事に頭が真っ白になって、何を、どうすればいいか、分からなくなってしまう。

 だけど――すぐに身体の感覚が戻って。

「んっつ……!」

 拒絶しようと、身体を突き放そうとしてみたものの

 ……動けなかった。

 力が入らない。

 何も考えられない。

 ――あぁ……どうして、こうなってしまったんだっけ。


108 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 19:56:11 ID:mnk0Nf3/

「奈良、さぁんっ……」

「……あ、ごめん、苦しかった……?」

 唇と唇が離れ、一息。その息は荒くて、熱くて。

 ……狙っているのか何なのか、何故か奈良さんの息が耳に吹きかけられている気がする。

 そうやってされるたびに私がピクリと反応するのを楽しんでいるのだろうか。

 ――あぁそうなんだろう。奈良さんの口端がだって緩んでる。

 断っておきますが、私達はこんな関係では断じて無い。

 これまでだって、ただ、冗談を言い合ったり、寂しい時間を過ごしたり(言葉どおり、話をしたり、時間を適当に潰したり)する馬が合う友達、だった。

 断じて、そんな関係ではない。

 そんな事を香らせる行為も一切なかった……と、思う。

 だから、私の動揺は、大きかった。

「苦しいもなにも……キスなんて、何……私たち、お友達で……」

 支離滅裂な言葉を並べ立てる。

 必死に今の気持ちを悟られないように気持ちを殺したつもりだったのに。

 流石の私もどくんどくんと大きく跳ね上がる心臓を押さえとめる事は出来なかったから


「何……て、私がしたかったから、しちゃった……お凛、可愛くて」

 あまりにあっさりとした言葉。

 奈良さんの手が、そっと私の胸に置かれる。

 ゆっくりと、撫で回し押しつぶすように。

「っつ、ぁぁっ……! い、嫌ぁ……っ! 奈良……さん!?」

 初めて感じる、気持ち。

 高潮する。

 どくんどくんどくん――あぁもう止まらない。

 音が、奈良さんにも聞こえてしまっているんじゃないだろうか?

 これ以上進んではダメだ、ダメになってしまう。

 だから、必死に言葉を紡いだ。

「……奈良さん……! 私達、おともだ――」

 だけど。

「もうさ……私、やめたい」

 言葉に、瞳に、また、思考が止まった。

「私、お凛と友達で、いたくない」

 遠くで、羽藤さんが私達を呼ぶ声がする。

 だけど、何といっているのか聞き取れない。

 その声を掻き消すように、奈良さんが言ったから。

「お凛が、好きだから」


109 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 19:57:59 ID:mnk0Nf3/

 ――あぁ、本当に。 どうして、こうなってしまったんだっけ。


「な、奈良さん……」

 

 いつも清楚正しくしている服が乱れているのにそれを直さないのは何故?

 この先の展開を期待しているのは何故?

 もっと触れてほしいと願っているのは何故?



 ……どうして? ー―私は奈良さんに触れたいと。


「あ、の……奈良さん」

「お凛、お凛は嫌い? 私の事、好きじゃない?」

「そんな、好き、ですわ、ですけど、私、奈良さんをそういう感情では……」

「そう……なんだ……お凛にとって、じゃあ今の行為って、迷惑なだけ、なんだよね。……ごめんね、お凛」

 ――寂しそうなその顔に、ずきりと良心が痛む。

 いや、痛んだのは、良心だけなのだろうか。

 それだけ、なのだろうか。


 ゆっくりと離れる奈良さんに、待ってとばかりに手を伸ばしてしまうのは何故だろうか。

 あの暖かさを、もう一度求めてしまうのは。

 乱れた服元を直さないのは。

 また、あの時間を求めてしまうのは。

 痛んだのは。


 ――きっと、そう。


「……そうですわね、今まで、自分を殺していたのかもしれませんわ……」


 本当の気持ちを言葉にしてしまうのが怖くて、押さえつけていた。

 「友達」だと自分に言い聞かせていた。

 きっと、ずっと前からそうだった。

 今なら戻れる「友達」を、放棄したいなんて、考えて。


110 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 19:58:59 ID:mnk0Nf3/


「……私も、奈良さんとは、友達でいたくありませんわ」

 だから、だから今――

「……こんな私とは、絶交したいって事?」

「いえ、そうじゃなく――!」

 私は、奈良さんが。


 ……言葉を紡ぐ前に、自分の唇はふさがれてしまった。

 再び、またあの熱い感覚が、身体を支配する。

「ん、ふ……」

「んっくぁ……ん」

 状況を判断するに要した時間は約十秒。

 私は、奈良さんに熱いキスを貰って、また、胸を触られて。

 嫌じゃない、むしろ、恍惚な感情が芽生えていて。

 舌が絡み合わせる事がこんなにも、愛しいだなんて。

 唇が離れてしまう事に、寂しさを覚えるなんて。


 ――離れた唇が唾液の橋を作って。 プツリとそれが途切れた刹那。

 愛しいあの人の言葉が聞こえた。

「……そうじゃなくて、何?」

 あ――この人、意地悪だわ。

 言葉を自分でさえぎったくせに。

 なんてひねくれた言葉を返そうとしてやるも、真っ赤にそまった顔がそれを容易に言う事を出来なくさせていて。

 目の前の人物がにやりと笑っている事もそれに加算していて。

 主導権なんて、自分は掠め取る事も出来ないくらい、奈良さんがしっかりと握っていて。

「そうじゃなくて、何かな、お凛? ……聞かせてよ」

 首筋にキスを落とされ、びくんと身体が跳ねる。

 熱い吐息が口から漏れる。

 本当に、意地悪だ。


111 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 20:00:16 ID:mnk0Nf3/

「ん……私も、貴方と同じ気持ちだと言えば、いいんですの?」

 うまく言えたか分からない言葉。

 だけど、それを言い終えた後、奈良さんが嬉しそうに微笑んだから、きっと、うまく言えていた。

「お凛、やっぱり好き!」

 ――か細い腕が、私をぎゅっと包む。

 あぁ……顔の熱が収まらない。



 彼女が、ゆっくりと、耳元でささやく言葉に。

「……だから、もっと、触りたい」

 心が跳ねて。

「……もっと、触ってもいいですわ……私も、奈良さんを触りたい」

 言葉も、跳ね上がる。

 顔の熱は、いつになったら収まるのだろう。


112 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 20:01:39 ID:mnk0Nf3/

奈良さんが、熱くなったスカートの奥に、手を探りいれる。

 私は、両手を奈良さんの首へと回し、ぎゅっと抱きしめた。

 ふいに、奈良さんが、小さく

「お凛って、感じやすい?」

 なんて、言って。

「……聞かないで下さいません?」

 気丈に振舞ったつもりでも、口元から漏れる熱い吐息は、そんな言葉の気丈さをかき消していた。

「答えられないんだ? へぇ……じゃあ、私が調べてあげちゃおっかな」

「ん……ぁ、そんな……つぅ……」 

 探りいれた手が、ショーツの中までいつのまにか侵入していて、そればかりか、自分の中に入る入り口の前まで指が来ていて。

 だが、じらすようにその入り口を何度も指先で巡回するだけで、まだいっこうに割れ目の奥へと侵入しようとはしない。

「は……ん……っ」

 何度もじらすような行為に、ひくひくと震えて。

 自分の奥が早く早くと先をせかす。

「可愛い、お凛……――甘い声、もうちょっと聞きたいな……」

「や、ぁっ……私、そんな……ふ、ぁぁ!」

 言った瞬間、くるくるとじらすように回っていた指が割れ目を広げ、ゆっくりと奥への侵入を開始していた。

 ちゅぷ……くちゅり……

 いやらしい音をたてて、どんどん、中へと入っていく。

 その不思議な感覚に、「あ、ぁぁっ!」 なんて、恥ずかしい声をあげてしまって。

 そんな言葉が出た自分に、びっくりして。


「ぁー……もう、とろとろだからすぐ指、食べられちゃう……お凛……凄いよ」

「や、やぁ! そんな、意地悪……ふ、ぁ……ぁぁっ」

「うん、私、意地悪だから、だから……もっとお凛の声、聞きたくなるの。止めろって言われてもね、止められなくなるの」

「そ、んな……ん、はぁ……んっ!」

 びくんと大きく身体が跳ね上がり、奈良さんを抱きしめる自分の腕に力がこもった。

 汗ばんだ体がぴっとりと、彼女の身体と触れ合う。

 息が二人、触れ合うくらいに密着したのは、今回が初めてのことじゃないだろうか。

 ――もう、奈良さん以外を見る事が出来ない。

 もう、二人以外の音が途切れてしまい、何も聞こえない。

 先ほどまで何かしらの声は聞こえていたというのに、今はもう奈良さんの言葉、服がこすれあう音、自分の奥の水がくちゅりくちゅりとはねる音、それだけしか。

「んっんんっ……」

「あは……指一本、全部入っちゃった……熱いな、お凛の中」

「……わ、私……変に……あぁ、ぁっ……変な声、とまらな……んっ」

「うん、変な声? とっても可愛い声じゃない。もっと聞かせて……ね? 気持ちいいように、動かしてあげるから……」


113 :名無しさん@ピンキー:2007/06/05(火) 20:03:22 ID:mnk0Nf3/

 指が自分の奥とこすれあって、びくりびくりと身体が反応して。

 怖いような、恐ろしいような、未知の感覚が。

 入れられたり、抜かれたりする奈良さんの指。

 いつしかその動きは早くなっていて。

 こすれあうたびに快感が上り詰めて――

「い、いやぁ! ぁ、ふぁぁ! ぁ、あぁあぁぁぁぁぁ!!」

 変に甲高い声を上げさせてしまう。


「……いっちゃった?」

 ぐったりと倒れる私の耳の傍で、小さく声。

 返す言葉がでなくて、小さく頷いて。

 ……一度は奮いあがった感情に絶えられなくて、奈良さんにしがみついた腕に力を入れてしまって――感情がおさまった後に離してしまったその身体を手で招いて。

「ねぇ……次は、私が触る番でしょう? 奈良さん」

 私は、彼女を求める。



友情変化 end