「姉さま、やはりやめた方がよいのでは…」
「お黙りなさいっ。 見なさいな、いくら主さまの向こうを張る恐ろしい鬼神とは言え、依り代は小娘よ。 贄の血の娘をほうっておいて」
闇夜に紛れ白い影が2つ、羽藤の屋敷に近寄ってくる。
「大方先の戦いで私たちを追い払ったと油断してるのよ。 それに実際贄の血でも飲まなければ力を回復できないでしょう」
「それはそうですが…」
辺りを見回す。
「あの小娘はどこかしら」
「先ほど不出来の娘と出て行きました」
「ほら、ごらんなさいな。 所詮は小娘、今が好期ではないの」
「しかし姉さま…」
「贄の血の匂いはここからね。 そんなに心配ならここで待っているといいわ。 私が十分なほど贄の血をいただいてくるから」
白い影の片方がすっと消える。
気づけば着物姿の白い少女が室内にひとり。 暗い羽藤の屋敷の中、広い部屋の中心に布団がしかれている。 頭まで布団をかぶった誰かが寝ている。
「さあ、その贄の血をいただかせてもらうわよ」
「いらっしゃいませ、ノゾミさん」
不意にかかる声に白い影が震える。
「ミ、ミカゲっ」
「今はサクヤさんと鬼切り役の相手で手が離せないかと思いますねー」
声の主は部屋の入り口に立っている。 小さな影。
「でもミカゲはさっき2人で出て行ったと…」
「出て行きましたよ? おねーさんの血の匂いに誘われて獲物がかかったようなので、鬼切り役を呼びにね」
小さな影は無造作に布団の方へと歩く。
「ちなみにこれはおとりです」
布団をめくると丸めた布団に血がついている。
「先ほどおねーさんの血をいただきすぎたので、ここにつけて匂いをばら撒いたわけですね」
「くっ」
白い影は焦りの色を浮かべ姿を消す。 …が、窓の近くで再び姿を現す。
「ど、どうしてっ」
「結界ですねー。 入るまで開けておいたものを入ったと同時に閉めただけです」
「そんなことどうやってっ」
「ご存知の通り、人にはいささか過ぎた力を手に入れたのでこの程度のことは」
「くっ」
白い影ーノゾミは赤い目を揺らし憎々しげに小さな影ー若杉葛を睨む。
「さて、妹さんは鬼切り役に任せるとして…。 あなたには恨みがありますよね…」
そう言いながら葛は口元で小さく呟く。
「このっ!」
言うやノゾミが赤い影を撒き散らす、がその赤い影は撒いたと同時にかききえる。
「ど、どうして…」
「することはわかっていますので。 次はこちらの番ですね」
ノゾミは慌てて距離を取ろうとする、が体が動かない。
「なっ!?」
不可視の糸のようなもので絡め取られている。
そこに葛がゆっくりと近寄ってくる。
「い、いくらあなたがあの鬼神の力を持っていても、主さまには到底敵うものではなくってよっ」
「ええ、そうですね。 しょせんは人の器に閉じ込められていますから、振るえる力にも限界がありますね。 確かに主には敵わないでしょう」
「わ、わかっているならさっさとこれを外しなさいなっ」
「残念ながらここに主はいませんようー」
もう葛はノゾミの目の前だ。
「ふふふ…」
冷たい目で葛が笑う。
「少しだけ私よりお姉さんな年齢で鬼になったのですね」
そう言いながらノゾミの着物の合わせ目から手を差し入れる。
「何をしているのっ! おやめなさいなっ!」
「これから…そう、私はこれからですが鬼のあなたにはこれから、はないのですね…」
柔らかく少しだけ盛り上がった丘に手を滑らせる。
「でもとりあえず今は私よりもありますよ? ふふふ…」
先端に手が触れ、そのまま握りこんでくる。
「おやめなさいなっ!」
「ねえ、ノゾミさん? 先ほど恨みがあると言いましたよ?」
「あの狐のこととこれとどう関係があるというのよっ!」
「大アリです。 ほら…」
そう言うと葛は纏う衣服を脱いでいく。 一糸纏わぬ姿になり動けず立ち尽くすノゾミの前に立つ。
「ほら…尾花も恨みを果たしたいそうですよ…」
「…な、何よ…それは…」
「尾花は男の子でしたから…」
一糸纏わぬ葛の下半身に屹立したものがある。
「わ、私は本体ある限り何をされようとも…」
「ええ、そうですね…本体を消さない限り幾度でも蘇るでしょう。 ですので消えない記憶を痕に恨みを晴らさんと尾花が望むのですよ、ノゾミさん」
「や…いや…。 ミ、ミカゲっ! 主さまーーーーっ!」
泣き叫ぶノゾミをよそに葛が帯を紐解いてゆく。
「綺麗ですよ…ノゾミさん…」
着物のはだけた合わせ目から葛が手を伸ばしノゾミに触れる。
「ほら尾花もこんなに…」
うっとりとした表情を浮かべ葛がノゾミと肌を重ねていく。
「ミカゲーーーーっ! 主さまーーーーっ! い、いやああああーーーっ!」
「生憎と私も知識だけで実践は初めてになりますが…まあこちらの側になるとは思いもしませんでしたけどね」
「いやっ、いやああああーーーっ!!」