68 :名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 23:57:04 ID:uPNdF6gq
もう陽も落ちて、黄昏時を少しまわった頃。
花子はひとり、家路を急いでいた。
もうこんな時間。担任持たせて貰えたのは良かったけれど……すること多くて、大変だわ〜
剣道部も見なくちゃいけないし〜
あ〜この辺りは街灯が離れてて苦手なのよね……。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
災い避けに念仏を唱えながら、急ぎ足で路地を抜けようとする。
すると……
暗闇からするりと鬼火。いや、人影が抜け出してくる。
すわ痴漢かと、心臓をびくんと驚かせる。が、現れたのは、思い描いていた強面で脂ぎった大男
などではなく、黒いスーツが長身によく似合う、男装の麗人であった。
それもただの麗人ではなく、過去幾度か心に思い浮かべたこともある……
「こんばんは。久しぶりだけれど、私の事、覚えてる……かな?」
目を細めて、気さくに手を振って挨拶してくる。
「か、夏夜さん〜!?え?でも、あの、あれ?」
突然の邂逅に、すっかりパニックに陥る花子。
九年前に会った時と同じ姿。思い出すのと寸分変わらぬ姿で、憧れのあの人が。鳴海夏夜が、目の前に居た。
あれ、なんで俺が書いてるの?
ガイドブックまだ届かないから、花子ちゃんとなっちゃんがどんな仲なのか、解らないんだぜ
79 :68:2008/06/08(日) 03:16:51 ID:39rxF6V1
「ま、まあ立ち話も何だし、どこか飲みに行きましょう」
パニックになったあげく、本能に従ってろくでもない提案をしてしまう。
だが夏夜は、酒が入っていた方が都合が良いだろうと頷き、着いていくことにした。
「花ちゃんも、お酒を嗜む歳になったのね」
自分が死んでいた間にも周りの時は動いている。道すがら、そんな当たり前のことを考え、少し寂しくなる。
私も梢ちゃんも、既に過去の人なのだろう。思い出の中だけの存在。
いや、私は人ですらないか……。しかし、それでも私は……
「どうかしましたか?夏夜さん」
自嘲の笑みを浮かべる夏夜に何かを感じたのか、花子が不安そうな顔をして訊いてきた。
「いや、なんでもないわ。なんでも。それより、早く飲みに行きましょう。強いんでしょう?」
「いや〜、あはははは」
いつもの調子が出てきたのか、花子が笑顔を覗かせる。
ごめんね花ちゃん……。私は貴女を傷つけてしまうかもしれない。
でも梢ちゃんを救うためには、どうしても剣を手に入れなければ。どんな手段を使ってでも。
例え、花ちゃんを傷付けることになったとしても。
今の私のツテと言えば、馬瓏琉と葵の道場くらいのものだもの……
闇に赤光を覗かせて、隣の花子を見つめる夏夜だった。
一発ネタの筈なのに、なんだかまた書いてしまった
カヤ×オサの俺が、なぜ花子ちゃんを書いているのだろう
89 :68:2008/06/08(日) 18:37:59 ID:39rxF6V1
「かんぱーい!」
「乾杯」
何度目かの乾杯を経て、最初は借りてきた猫だった花子も、すっかりイイ感じに出来上がっていた。
「それで、夏夜さんはなぜ昔の姿のままなんですか?」
「それは……」
「あっ、わかった〜!人魚の肉でも食べたんですね!?」
「あ、まぁそんな所です」
「やっぱり〜。海難事故にあったって聞きましたけど、海に投げ出された所を人魚に救われたんですね!
嗚呼、浪漫ですよね〜伝奇ですね〜
あの時は凄くショックだったんですよ〜?お父さんのお客様として通ってらしたから、お世辞にも親しいとは言えませんけど、それでもねぇ〜
ザンの肉ってどんな味なんですか?南方熊楠が編纂した話にも、味については書かれてないんですよね〜
やっぱり、柘榴みたいな味なのかしら。食べてみたいわぁ〜」
鳴海夏夜は混乱していた。
当初の予定では、泥酔した花ちゃんをホテルへ連れ込み
虜にして、おじ様の伝手を頼りに剣の情報を集める。
その筈だった。
花ちゃんが私に憧れていたのは知っていたし、女子高でよく目にした、
同性を恋愛の対象にする者特有な部分を持ち合わせているとも感じていた。
警察の同僚がしばしばやった様に花ちゃんを痛めつけて宥め賺すのは嫌だったし、それでは話が大きくなってしまう。
これが最善の策だと、必殺の片手面のつもりで臨んだのだが……。
馬瓏琉から預かった携帯電話での、ゴニョゴニョな予習も無駄に終わり、ホッとするやら肩すかしやら。
誠心誠意、頭を伏して頼むという案は、何故か全く頭に浮かばなかった。
鳴海夏夜。こうと決めたら周りが見えなくなる質なのである。
やっぱり花子ちゃんで濡れ場は無理。書いたけど無理。